1. 制度の概要

省力化投資補助金(一般型)は、中小企業・小規模事業者の深刻な人手不足に対応し、IoT・AI・ロボット等のデジタル技術を活用した専用(オーダーメイド)設備の導入を支援する補助制度です。
事業の省力化・自動化によって生産性向上と賃上げの好循環を目指します。
省力化投資補助金(一般型)は、省力化投資補助金(カタログ型)と比較すると、個々の業務プロセスに合わせて設計・構築する個社最適のシステム/設備導入を対象とする点が特徴です。

💡省力化投資補助金(カタログ型)について知りたい方はこちらをご覧ください

中小企業経営者のための「省力化投資補助金(カタログ注文型)」ガイド(2025年9月4日最終更新)

1. 制度の概要 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)は、人手不足に悩む中小企業等が、IoT機器やロボットなどの汎用製品を活用して業務を効率化し、生産性を高める…

本制度で想定する課題と解決アプローチ

  • 現場の人手不足・長時間作業・属人化
  • 受注増や多品種少量化への対応遅れ

→ 個社の業務要件に合わせたシステム構築+機械装置導入で、作業工数の削減・品質安定化・可視化を実現します。

用語の定義

  • オーダーメイド設備:外部SI等と連携し、各社の業務に合わせて設計する機械装置・情報システム一体の導入。
  • 省力化:既存業務で発生している作業時間(工数)を恒常的に削減すること。
  • 省力化指数:導入前後の削減対象業務時間の差に基づく効果指標。
  • 付加価値額/労働生産性:補助事業の成果確認で用いる経営指標。
  • 投資回収期間:削減工数や増加する付加価値を踏まえた投資効果の目安。

2. 補助対象となる事業者

共通の前提要件

  • 国内に本社があり、補助設備を置く実施場所も国内
  • 応募時点で法人登記が済み、法人番号が国税庁サイトに公表されている(個人事業主も対象)。

これらの要件を満たす場合、以下の対象区分のいずれかに当てはまるなら本制度を利用可能です。

対象区分の早見表

A. 中小企業者(組合関連以外)

「資本金」または「常勤従業員数」1どちらか一方が基準内ならOKです。

業種資本金(上限)常勤従業員数(上限)
製造・建設・運輸3億円300人
卸売1億円100人
サービス(※ソフトウェア・情報処理・旅館を除く)5,000万円100人
小売5,000万円50人
ゴム製品製造(※自動車/航空機用タイヤ等を除く)3億円900人
ソフトウェア/情報処理3億円300人
旅館5,000万円200人
その他の業種3億円300人

B. 小規模企業者・小規模事業者

区分常勤従業員数(上限)
製造業その他/宿泊業/娯楽業20人以下
卸売・小売・サービス業5人以下

C. 特定事業者の一部(※資本金10億円未満)

資本金(出資総額)が10億円未満かつ従業員数が業種ごとに定められた上限以内の企業や組合等も対象となります。

業種常勤従業員数(上限)
製造・建設・運輸500人
卸売400人
サービス/小売(※ソフトウェア・情報処理・旅館を除く)300人
その他の業種500人

D. 中小企業者(組合関連)

対象となる各種組合(例):

  • 企業組合、協業組合
  • 事業協同組合/事業協同小組合/協同組合連合会
  • 商工組合/連合会、商店街振興組合/連合会
  • 水産加工業協同組合/連合会、生活衛生同業組合 等
  • 酒造組合・酒販組合 等、内航海運組合 等

申請にあたっての注意ポイント

  • みなし同一法人の扱い(親子会社等):親会社が議決権50%超の子会社を持つ場合など、グループで1社のみ申請となるケースがあります。申請要件を満たさない扱いになるため要注意。
  • 小規模の取扱い:従業員数が定義から外れた場合、補助率が変更になることがあります。

3. 補助対象経費と補助額

補助対象となる主な経費

まず、本制度は設備投資が必須です。少なくとも単価50万円(税抜)以上の機械装置等を1点以上導入することが前提になります。
その上で、関連する運搬・外注・専門家・クラウド費用なども対象になり得ます。

  • 機械装置・システム構築費(必須)
    機械・装置、工具・器具、専用ソフトウェアや情報システムの購入・構築・据付など。
    ※船舶・航空機・車両等は対象外です。
  • 運搬費/技術導入費/知的財産権等関連経費/外注費/専門家経費/クラウドサービス利用費2が併せて対象です。
    機械装置以外の経費には合計に対する上限割合が設定されています

いずれの経費も交付決定以降の契約・支払いが対象。実施期間内に支払完了したものに限られます。

補助対象外となる主な経費

以下の経費は補助対象となりませんのでご注意ください。

  • 事前着手
  • 既存設備の改修のみ
  • パッケージ/汎用ソフトの購入・設定のみ
  • 通常業務の代行費

補助額と補助率

補助額は「従業員数ごとの上限額」と「補助率」で決まり、特例で上限や率が上がる場合があります。

従業員数ごとの上限額

従業員数基本の上限額
5人以下750万円
6~20人1,500万円
21~50人3,000万円
51~100人5,000万円
101人以上8,000万円

大幅賃上げの特例(上限額の上乗せ)

「大幅賃上げ」に取り組む場合、従業員数に応じて上限額を加算できます(最低賃金引上げ特例の適用者・上限未達・再生事業者・常勤従業員ゼロは対象外)。

従業員数上限額の加算特例適用時の上限額
5人以下+250万円1,000万円
6~20人+500万円2,000万円
21~50人+1,000万円4,000万円
51~100人+1,500万円6,500万円
101人以上+2,000万円1億円

補助率

区分~1,500万円部分1,500万円超部分
中小企業1/2(※特例時 2/3)1/3
小規模企業者・小規模事業者/再生事業者2/31/3

※「最低賃金引上げ」に係る補助率の引上げ特例あり(中小企業の~1,500万円部分を2/3に引上げ)。

4. 公募スケジュール

省力化投資補助金(一般型)は、年間3~4回の公募を予定しています。各回ごとに「公募開始 → 申請受付開始 → 締切 → 採択発表」という流れで進みます。

最新のスケジュールを知りたい方はこちらへ

【最新】主要補助金の公募スケジュール・ニュースまとめ(2025年9月7日更新)

1. 主要補助金の公募スケジュール一覧 本ページの更新時点で応募可能な(申請が締め切られていない)補助金をハイライトしておりますので、次に狙う補助金を探す際の参考…

主なイベント

  1. 公募開始
    年に数回、事務局ホームページで公募要領とあわせて案内が出ます。各回の受付開始・締切は公式サイトで随時更新されます。
  2. 申請受付期間
    各回ごとの受付期間は公式サイトで告知。申請は電子申請(jGrants)が原則で、事前にGビズIDプライムの取得が必要です。
  3. 審査・採択発表
    締切後、審査を経て採択発表日に、法人番号・事業者名・所在地(市区町村)・事業計画名・支援機関名などがホームページで公表されます。
  4. 交付申請・事業開始
    採択されたら、採択決定日から2か月以内交付申請を行います(間に合わない恐れがある場合は事前に事務局へ相談。連絡なしは採択取消の可能性があります)。交付決定後に事業着手となります。
  5. 事業実施期間
    交付決定日から18か月以内(※採択発表日から最長20か月後まで)が実施期間。期間内に契約(発注)・納品・検収・支払まで完了し、実績報告書を提出します。
  6. 実績報告・補助金の支払い
    事業完了後、完了日から30日以内または完了期限日のいずれか早い日まで実績報告書を提出。補助金は実績報告の受理後、金額確定後の精算払で支払われます。

過去の実施回数(参考)

省力化投資補助金(一般型)は、2025年から本格実施しております。
2025年は第1回・第2回・第3回まで公募が行われ、事務局の公式スケジュールに掲載されています(第4回は調整中)。

直近の実績例(2025年):
第1回(公募開始 1/30/採択発表 6/16)、第2回(公募開始 4/15/採択発表 8/8)、第3回(公募開始 6/27/採択発表 11月下旬予定)。

補足:省力化投資補助金(カタログ注文型)は2024年以降、随時受付に移行しており、一般型とは運用が異なります。

5. 申請要件

省力化投資補助金(一般型)は、一定の条件を満たす中小企業・小規模事業者が申請できます。

対象者

  • 中小企業基本法に定める中小企業・小規模事業者が中心
    くわしい資本金・従業員数の基準や、組合等の取扱いは「2. 補助対象となる事業者」をご覧ください。
  • 日本国内に本社(または事業所)があること

事業要件

  • 省力化に取り組む事業であること
    生産・業務プロセス、またはサービス提供方法の省力化に該当すること
  • 専用設備(オーダーメイド設備等)の導入が前提
    ICT/IoT/AI/ロボット/センサー等を活用し、自社の業務に合わせて設計された機械装置・システム(ロボットシステム等)を導入する計画であること

経費・手続きの要件

  • 交付決定“後”に契約・支払いした経費のみ対象(実施期間内に発注→納品→検収→支払まで完了)
    実施期間は交付決定日から18か月以内(採択発表日から20か月以内)
  • 電子申請が原則/GビズIDプライムが必要(申請前に取得を)
  • 対象経費の範囲:機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費

賃上げ・生産性の「基本要件」(必達目標)

申請時に会社全体の目標として以下を設定し、事後に達成状況を報告します。
※「最低賃金引上げ特例」対象者は 1. 2. 4. を満たせば可。
※ 2.や3. が未達の場合は、返還ペナルティの可能性

  1. 労働生産性:年平均成長率 +4.0%以上
  2. 以下のいずれかを達成:
    • 1人当たり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施都道府県の最低賃金の直近5年平均上昇率以上
    • 給与支給総額の年平均成長率 +2.0%以
  3. 事業所内最低賃金:事業実施都道府県の最低賃金 +30円以上
  4. 行動計画の公表(従業員21名以上):次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の公表 等。

6. 事業計画書作成のポイント

ここでは、本制度ならではの重点ポイントに絞って解説します。
「読み手(審査員)が評価しやすい」形に寄せて、何を書くべきかどう書くと伝わるかを整理しました。
補助金申請に必要な事業計画書の書き方の基本が知りたい方は、こちらもご覧ください

補助金申請に必要な事業計画書の書き方|基本構成・作成の流れ・成功のコツ(テンプレ付き)

補助金申請において、事業計画書は採択されるかどうかを左右する最重要書類です。銀行融資や社内向けの事業計画書とは異なり、補助金用では審査員から見て公的支援をすべ…

まず“審査の4本柱”に合わせて構成

事務局が評価する技術面の観点は①省力化指数 ②投資回収期間 ③付加価値額 ④オーダーメイド設備(の妥当性)です。
章立て・見出しもこの順で揃えると読みやすくなります。

省力化指数:式と前提を、作業単位で見える化

  • 定義(式):〔導入前の削減対象業務時間 − 導入後に発生する業務時間〕÷ 導入前の削減対象業務時間
  • 前提づくり:どの工程の何の作業を何分減らすのか、導入前後の工数テーブルで示す(新規出店等は将来の削減時間も組込可)。
  • 参考:カタログ注文型のカテゴリ相当品を導入する場合は、審査で考慮されます(記載しておく)。

投資回収期間:式+積み上げ根拠をセットで

  • 定義(式):投資額 ÷(削減工数×人件費単価 + 増加した付加価値額)
  • 書き方:
    • 人件費単価の算出根拠(賃金台帳等)と増える粗利・加工高等の裏付けを併記
    • 試算の前提(稼働率・処理量・不良率など)を明記。

付加価値・生産性・賃上げ:会社全体の計画を表で

  • 定義
    • 付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
    • 労働生産性=付加価値額÷労働者数
  • 書き方:会社全体の事業計画(表)に、労働生産性・(一人当たり)給与支給総額等の算出根拠を付して提示
    これらは事後の効果報告で毎年検証されます。

オーダーメイド設備の妥当性:なぜ“専用設計”が必要か

  • 定義:ICT/IoT/AI/ロボット/センサー等を活用し、外部SIer等と連携して自社の業務に合わせて設計された機械装置・システム(ロボットシステム等)
  • 書き方:レイアウト・段取り・安全対策・周辺機器とのI/Fなど、汎用設備では代替できない理由構成機器の選定理由を説明
    カタログ該当カテゴリなら明記

ストーリーライン:会社全体への波及まで

  • その1:取り組みの具体と全社目標との整合
    現状の課題→導入必然性→取得資産(型番・時期)→省力化の程度スケジュール図表・写真で具体的に
  • その2:将来の展望
    削減した労働力をどこへ再配分し、どんな付加価値を生むかを簡潔に
  • その3:会社全体の数値計画
    計算式と根拠を添えて表で提示(省力化指数・投資回収・付加価値等も同様)

その他の記載事項

必須
  • 取得資産の一覧(単価50万円以上):名称・型番・数量・概算単価/金額・計上区分(機械装置/システム等)・設置予定場所
  • 実施場所の特定:住所(拠点名)や配置イメージ(簡易図で可)
推奨
  • システム構築の概要(該当する場合):目的/機能範囲・成果物(納品物)
  • スケジュール:交付決定「後」→発注→納品→検収→支払→実績報告までの主要マイルストーン
  • 体制と役割分担:申請者側の責任者・実務担当、ベンダー側の担当(窓口)
  • 価格の妥当性(概要):見積根拠や選定理由の考え方(詳細書類は交付申請以降で可)
  • 添付予定資料のリスト化:見積/仕様書/図面・カタログ/レイアウト図 など(申請時提出・後日提出の整理)

事業計画書チェックリスト(簡易診断用)

省力化投資補助金(一般型)申請用の事業計画書の妥当性を簡易に診断するためのチェックリストです。ぜひご活用ください。

A. 技術評価(審査の4本柱)

  • 省力化指数:式・前提・導入前後の工数が明確で、削減効果が十分に大きい
  • 投資回収期間:算定式と前提(稼働率・人件費単価・処理量等)が妥当で、回収期間が短い
  • 付加価値額の増加:増える根拠(単価・数量・粗利など)が具体的に積み上がっている
  • オーダーメイド設備の妥当性:自社工程に即した“専用設計”の必要性が論理的/汎用設備で代替不可

B. 経営成果・賃上げ(基本要件の実現性)

  • 労働生産性:年平均+4.0%以上の目標と算出根拠が提示されている
  • 給与:①1人当たり給与=最低賃金の直近5年平均上昇率以上 または ②給与総額=年平均+2.0%以上の計画を明示
  • 事業場内最低賃金:地域最低賃金+30円の方針を織り込んでいる
  • 全社への波及:削減した工数の再配分(高付加価値業務・新サービス等)が具体

C. 実現可能性(計画・体制・資金)

  • スケジュール:交付決定後に発注→納品→検収→支払→実績報告まで期間内に完了できる計画
  • 体制:責任者・実務担当・ベンダー窓口を明記
  • 資金計画:自己資金・借入の当てと根拠があり、実行可能性が高い
  • リスク対策:主要リスク(調達遅延、開発難易度、設置工事 等)と対策を記載

D. 適格性・コンプライアンス(要件充足)

  • 対象者:中小企業者等の範囲に該当(みなし同一法人の制限も確認済み)
  • 対象事業・経費:設備投資(単価50万円以上を1点以上)を含み、対象外経費を計上していない
  • 支出ルール:交付決定“後”の契約・支払いのみ計上する設計になっている
  • 重複受給:他補助・報酬等との経費重複がない(過去実績の記載も整備)
  • 外部支援の透明化:支援者名・報酬・期間を申請書で開示できる状態

E. 根拠・図表(説得力)

  • 工数テーブル:工程別のBefore/After工数・処理量・前提が表で可視化
  • 取得資産一覧:名称・型番・数量・概算単価・計上区分・設置場所を一覧化
  • 配置・工程図:レイアウト/動線/I/Fの概略図
  • 見積根拠:概算見積・単価根拠を提示

F. 申請書の読みやすさ(構成・整合)

  • 章立て:Aの4本柱→Bの基本要件→Cの体制・資金の順で、見出しと内容が対応
  • 用語と数式:定義・式・単位が統一/本文・表・添付の数字が整合
  • 要約:冒頭に“ねらい・効果・投資回収”の要約(1ページ以内)がある

G. 特例・加点(該当時)

  • 大幅賃上げ特例:追加要件(上限加算・補助率引上げの条件)を満たす計画と根拠
  • 最低賃金引上げ特例:該当条件の確認と必要記載の反映

7. 申請の流れ

省力化投資補助金(一般型)の申請は、原則、電子申請システム(jGrants)を通じて行います。
事前準備から採択後の手続きまでの一般的な流れは以下の通りです。

1. 事前準備

  • GビズIDプライム取得(電子申請に必須/発行に時間がかかるため早めに)
  • 公募要領・申請様式の入手
    最新版を公式サイトからダウンロードして確認します。

2. 申請書類の作成

事業計画書など必要書類を準備し、申請様式に沿って入力します。
申請内容は、要件や審査項目に沿って作成することが重要です。

必要書類(申請時)

共通(必須)
  • 事業計画書(電子申請フォーム一式に沿って作成・提出)
申請者区分ごとの添付
  • 法人の場合
    • 履歴事項全部証明書(発行から3か月以内)
    • 納税証明書(その2)直近3期分
    • 法人事業概況説明書
    • 【指定様式】役員名簿
    • 【指定様式】株主・出資者名簿
  • 個人事業主の場合
    • 確定申告書(第一表)の控え
    • 納税証明書(その2)直近1年分
    • 所得税青色申告決算書 または 白色申告収支内訳書

その他、該当する場合のみ提出を求められる書類もありますので、公募要領をご確認ください。

3. 電子申請(jGrants)

  • jGrantsにログインし、必要情報を入力→ファイルを添付→期限内に送信
    添付場所の誤りやパスワード設定があると審査不可になることがあるので注意

4. 審査・採択結果の公表

  • 締切後に審査され、採択結果は公式サイトで公表されます。
  • 採択された場合、交付申請に進みます。

5. 交付申請・交付決定

  • 採択後2か月以内に交付申請(間に合わない恐れがある場合は事前に事務局へ相談)
  • 交付決定通知後、事業開始可
  • この段階で価格妥当性の確認書類(原則、50万円(税抜)以上は相見積/システムは仕様書+積算根拠)が必要

6. 事業実施

  • 交付決定後に契約・発注・支払いを行い、実施期間内に完了(交付決定から18か月以内/採択発表から最長20か月
    契約→納品→検収→支払→実績報告まで完了させます。
  • 支払いは銀行振込で確認(現金・手形は対象外。原則クレカ不可)

7. 実績報告・補助金請求

  • 事業完了日から30日以内または完了期限日のいずれか早い日まで実績報告書を提出
  • 確定検査後、精算払で交付されます。
  • 交付年度終了後5年間は毎年度効果報告が必要です(未提出・虚偽は返還対象)。

8. 採択の傾向とポイント

「どんな計画が通りやすいのか?」「採択率はどれくらいか?」を、最新の公開データと審査観点からコンパクトにまとめました。

採択されやすい事業の特徴

  • 4本柱が強い
    省力化指数が高い(作業工程ごとの削減時間が見える)
    投資回収が早い(算定式と前提に妥当性)
    付加価値額が伸びる設計(単価×数量×粗利などの積み上げ)
    ④“専用設計”の設備導入(汎用機の寄せ集めでなく、工程に合わせたOM設計)を、根拠付きで説明
  • 分野の傾向:第1回の採択は製造業が約62%、建設業が約11%と多め
    ただし卸・小売、サービスなど幅広い業種からも採択。
  • 金額帯の傾向:採択者の申請額は1,500~1,750万円が最多
    上限いっぱいに近い帯が目立ちます。
  • 事例の共通点ロボット×3Dスキャナなどデジタル技術を組み合わせた専用ライン化で、技能依存やヒューマンエラーを抑える設計が多い。

“省力化の大きさ×回収の速さ×専用設計の必然性×全社の付加価値伸長”を数字と図表で一体として示せると強いです。

採択率の傾向

  • 2025年・第1回:申請 1,809/採択 1,240採択率 約68.5%
  • 2025年・第2回:申請 1,160/採択 707採択率 約60.9%

初回は相対的に高採択(約68.5%)→第2回は約60.9%に低下。ただし依然として6割前後の高水準。今後は応募増で緩やかに低下する可能性が懸念されます。

採択率を高めるためのポイント

  • 省力化指数は“工程別工数テーブル”で:対象作業、人数、時間を導入前後で表に。式と根拠データまでセット。
  • 投資回収は“式+前提+証拠”投資額÷(削減工数×人件費単価+増加する付加価値)とし、稼働率・単価根拠を明示
  • 専用設計の必然性:汎用機で代替できない理由、周辺機器の構成やI/F、レイアウトを短く図解。汎用機の組合せでも効果を示せれば可
  • 対象外の落とし穴は避けるパッケージ/汎用ソフト購入と設定のみ既存システムのバージョンアップのみ等は対象外。計画段階で排除しておく。
  • 全社目標との整合:会社全体の生産性+賃上げの基本要件を計画に織り込み、効果の波及先まで記述。

9. 採択後の流れと義務

交付申請〜事業開始

  • 採択後に「交付申請」で経費内容を精査・確定します。
  • 交付決定の通知後に発注・契約・支払いが可能です(交付決定前の支出は対象外)。

事業実施(現地確認あり)

事務局・中小機構による現地調査で設備・証憑を確認します。
確認できない費用は対象外となります。

実績報告

事業完了後、導入設備の検収・支払などの証憑をそろえて実績報告を提出(保険加入書類も提出対象)します。

効果報告(毎年度)

  • 事業計画期間(3〜5年)の各年度で、労働生産性・給与等の達成状況を報告(効果報告回数を用いて年平均成長率を評価)します。
  • 伸び率は「毎年度の効果報告」で確認されます。
  • 賃上げ等の加点を申請して未達だった場合、当該未達の報告から18か月間は次回公募や他制度申請で大幅減点(正当な理由があれば除外)されます。

財産の管理・処分制限/保険加入

  • 取得資産は補助金適正化法に基づき、売却・転用・廃棄に制限(違反時は残存簿価等返納)されます。
  • 善管注意義務に基づき、導入機械等には保険または共済(付保割合50%以上)加入が必須です。
    実績報告時に加入書類を提出します。

義務違反時の措置

不適切対応・虚偽や管理不備がある場合、交付決定取消・返還・不正内容の公表等の措置があります。

10. 注意点

設備投資が必須/“50万円(税抜)以上”を1点以上

単価50万円以上の機械装置等を取得・納品・検収・管理まで行うことが前提です。システム構築費は、採択後に仕様書等で価格妥当性の確認書類を求められる場合があります。

交付決定“前”の契約・支払いは全て対象外支払いは銀行振込で確認

補助対象経費は事業実施期間内の銀行振込の実績で確認します(現金・手形は対象外、クレジットは原則不可)。
やむを得ないケースは事前に事務局へ相談を。

電子申請のみ/GビズIDプライム必須

GビズIDプライムは発行に時間を要するため早めに取得しましょう。
申請時には電子申請マニュアルを順守してください(添付場所の誤りやPW付与は審査不可の原因に)。

“対象外”の典型例に注意

パッケージ/汎用ソフトの購入・設定のみ既存システムのバージョンアップ・改修のみ主課題の丸投げ外注長期賃貸目的 等は対象外です。
これらに該当しない計画を策定してください。

効果報告の義務と未達の減点

事業計画で示した伸び率(生産性・賃上げ等)は、毎年度の効果報告で確認されます。
未達が報告されると18か月間、本補助金や他補助金で大幅減点(正当理由がある場合は免除)されます。

現地調査あり

中小機構・事務局の現地調査で設備や証憑を確認します。
確認できない費用は不採択扱い(対象外)となります。

財産の管理・処分制限

単価50万円以上の機械等は法定耐用年数まで処分制限。譲渡・廃棄・転用・貸付・担保設定等は事前承認が必要で、場合により残存簿価等の納付が生じます。

保険(または共済)加入が必須

導入機械は付保割合50%以上の保険・共済に事業計画期間終了まで加入し、実績報告時に加入書類を提出します。
未加入・管理不備は取消・返還の対象となります。

見積・価格妥当性

採択後の交付申請では、50万円(税抜)以上は原則“相見積”最低価格を選ばない場合は理由書+妥当性資料が必要となります。
システム構築費は仕様書+積算根拠が明確な見積書が求められます。

リース利用時の注意

対象はファイナンス・リースのみです。
リース料そのものは補助対象外で、リース料軽減計算書の提出等が必要となります。
リース物件も処分制限の対象です。

スケジュールの基本線

採択後2か月以内に交付申請、実施期間は交付決定日から18か月以内(採択発表から20か月以内)が目安です。
納期や工事を踏まえ、期間内に完了できる計画を策定しましょう。

申請ルール(重複・同一法人 等)

同一法人・事業者の同時申請不可(公募回につき1申請)です。
みなし同一法人の規定や、他補助との重複受給禁止も必ず確認を。

11. よくある質問(FAQ)

Q1. 補助金はいつ支払われますか?
A. 事業完了後に実績報告が承認されてからの精算払いです(前払いなし)。
実績報告は完了から原則30日以内または完了期限の早い方までに提出します。

Q2. 応募申請時に見積書は必要ですか?
A. 不要です
見積書は採択後の交付申請で必要となり、50万円(税抜)以上は原則2者以上の相見積、最低価格以外を選ぶ場合は理由書+価格妥当性資料を提出します。
システム構築費は仕様書+積算根拠が明確な見積書が求められます。

Q3. 交付決定前に発注・契約・支払いをしてもいいですか?
A. 不可です。
交付決定“後”の契約・支出のみが補助対象です。

Q4. どんな経費が対象/対象外ですか?
A. 単価50万円(税抜)以上の機械装置・システム構築費を1点以上含む設備投資が必須です。
一方、パッケージ/汎用ソフト購入・設定のみ既存システムの改修・バージョンアップのみ等は対象外です。

Q5. 支払い方法に制限はありますか?
A. 銀行振込の実績で確認します(現金・手形は対象外、クレジットカードは原則不可)。

Q6. リースで導入できますか?
A. 対象リース会社との共同申請ファイナンス・リースのみ可です。
補助対象は販売事業者への購入費で、リース料そのものは対象外リース料軽減計算書の提出が必要です。

Q7. 他の補助金と併用できますか?
A. 同一経費の重複は不可です。
国等の他制度と重複する場合は対象外で、過去・現在の交付/申請実績の記載が必要です。

Q8. 1つの公募で複数申請できますか?
A. 同一法人・事業者につき1申請のみです。
酷似計画の重複申請等は申請制限の対象になり得ます。

Q9. 採択後に内容を変更できますか?
A. 配分や内容の変更、事業中止・廃止は“事前承認”が必須です(独断での変更は不可)。

Q10. 採択後の義務はありますか?
A. あります。
5年間の効果報告(各会計年度終了後60日以内)が必要で、未提出・虚偽は返還の対象です
導入機械は保険・共済(付保50%以上)加入が義務で、実績報告時に加入書類を提出します。

12. まとめ

省力化投資補助金(一般型)は、人手不足の解消と生産性向上を目的に、各社の工程に合わせた専用設計(OM)を含むデジタル設備への投資を後押しし、賃上げと付加価値の持続的な伸びにつなげる制度です。
対象は省力化に資する取組×専用設備の導入にフォーカスされており、審査では省力化の大きさ・投資回収の妥当性・専用設計の必然性がポイントになります。

一方で、補助上限が相対的に高いため、専用設備(ロボットシステム等)で工程を最適化することが経営課題の解決に直結するケースでは、強力な選択肢となります。
採択率は公募回ごとに変動しますが、準備の質が結果を大きく左右します。

申請を検討する場合は、主要設備リスト(50万円以上)と設置計画工程別のBefore/After工数と回収試算、そしてGビズIDプライムの準備などから着手するのが近道です。締切前に余裕を持って整えれば、採択に向けた“勝ち筋”が見えやすくなります。

事務所では、本制度の活用に向けた事業計画書作成支援申請サポートを行っています。
初回相談は無料ですので、

  • 制度の詳細を知りたい方
  • 自社が申請対象になるか確認したい方
  • 事業計画書や必要書類の準備に不安がある方

はお気軽にお問い合わせください。

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免責

本ガイドは公開情報に基づいた概要です。最新の要件・様式・受付状況は、必ず公式サイトおよび最新の公募要領でご確認ください。内容は予告なく変更される場合があります。



  1. 「中小企業基本法」における常時使用する従業員を基準にカウントします(雇用形態の取扱いなど細かな条件は原文をご確認ください)。 ↩︎
  2. クラウド関連:サーバーの領域の賃借やクラウドサービス利用料はOK。ただしサーバー本体の購入やレンタルは対象外。期間超過分は按分。
    専門家経費:事業に必要な助言等の謝金・国内旅費は対象(1日上限5万円、価格妥当性の確認が必要)。
    外注費:一部設計・開発の外注は対象。ただし外注先の設備購入費は不可。製作を外注する場合は「機械装置・システム構築費」で計上。 ↩︎