1. 新事業進出補助金とは
概要
新事業進出補助金は、中小企業等が 既存事業とは異なる分野に挑戦し、新市場や高付加価値事業へ進出する取り組み を支援する制度です。
目的は、企業規模の拡大や付加価値向上を通じた 生産性向上と賃上げの実現 にあります。
この制度は、経済産業省・中小企業庁が所管し、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営します。
補助金を活用することで、新たな製品やサービスの開発、販路開拓、生産設備の導入など、新規事業展開に必要な投資の負担を軽減できます。
制度の背景
- 国内市場の成熟や人口減少により、中小企業は新たな収益源の確保が課題となっています。
- 補助金は、新事業分野への参入や高付加価値化を促進し、企業の持続的成長を後押しします。
- 賃上げや地域経済の活性化にもつなげることが目的です。
期待される効果
- 新製品・サービスの開発による 売上・利益の拡大
- 新市場参入による 顧客層の多様化
- 生産性向上による 競争力の強化
- 従業員の待遇改善と 人材確保の促進
本制度で想定する課題と解決アプローチ
想定される課題
- 既存事業の成長限界
既存顧客層や市場が飽和し、売上拡大が困難。 - 設備・技術の陳腐化
老朽化や技術革新の遅れにより、競争力が低下。 - 新規市場への参入障壁
設備投資や人材確保に必要な資金が不足。 - 賃上げや人材確保の難しさ
利益余力がなく、待遇改善が進まない。
解決アプローチ
- 資金的支援
新規事業に必要な機械装置、システム構築、広告宣伝等への投資を補助。 - 高付加価値化の促進
製品やサービスの差別化、ブランド強化を支援。 - 賃上げインセンティブ
一定の賃上げを行った事業者には補助上限額を引き上げる特例を用意。 - 持続可能な経営計画の策定支援
会社全体の事業計画と連動させ、長期的成長を目指す。
用語の定義
- 新事業進出
「新事業進出指針」において、既存事業と異なる市場または製品・サービス分野への進出を指す。- 製品等の新規性:事業者にとって新しい製品・サービスであること
- 市場の新規性:これまで対象としていなかった顧客層やニーズへの参入であること
- 付加価値額
営業利益 + 人件費 + 減価償却費 の合計額 - 賃上げ要件
事業計画期間中に、給与支給総額または一人当たり給与支給総額を一定率以上増加させること。
未達の場合は補助金の一部返還義務あり。 - 事業場内最低賃金
本補助事業を実施する事業場で最も低い賃金。地域別最低賃金より30円以上高い水準を維持する必要あり。 - 賃上げ特例
補助事業期間中に給与支給総額を6.0%以上、事業場内最低賃金を年額50円以上引き上げることで、補助上限額の引上げが認められる特例
2. 補助対象となる事業者
本補助金の申請ができるのは、以下の条件を満たす 中小企業者等 です。
ここでいう「中小企業者等」には、会社、個人事業主、一定の組合等が含まれます。
対象者の要件
以下のいずれかに該当し、かつ日本国内に本社または主たる事業所を有する事業者。
- 会社(株式会社、合同会社、合名会社、合資会社)
- 個人事業主
- 中小企業等協同組合 等
- その他、中小企業基本法に規定する中小企業者
中小企業者の定義(資本金または従業員数の基準)
業種 | 資本金 | 従業員数 |
---|---|---|
製造業・建設業・運輸業 等 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
主な対象外事業者
以下に該当する場合は、本補助金の対象外です。
- 大企業およびその子会社・関連会社
- みなし大企業(出資構成や役員構成により大企業と同等と判断される事業者)
- 風俗営業等、法令で禁止・制限される事業を行う者
- 暴力団等反社会的勢力、またはその関係者
- 過去に補助金等の不正受給や重大な違反を行った者
- 直近の決算において債務超過で、経営再建の見込みが立たない者
- 国税・地方税を滞納している者
3. 補助対象経費と補助額
本補助金では、新事業進出に必要な設備投資や販路開拓等の経費について、一定割合が補助されます。
補助額や対象経費の範囲は以下のとおりです。
補助額・補助率(従業員数別)
従業員数 | 補助上限額 | 補助上限額(賃上げ特例適用時) | 補助率 |
---|---|---|---|
20人以下 | 2,500万円 | 3,000万円 | 1/2以内 |
21〜50人 | 4,000万円 | 5,000万円 | 1/2以内 |
51〜100人 | 5,500万円 | 7,000万円 | 1/2以内 |
101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 | 1/2以内 |
* 賃上げ特例は、事業計画期間中に所定の賃上げ要件および事業場内最低賃金引上げ要件を満たす場合に適用されます。
* 補助下限額は、750万円です。
補助対象となる主な経費
補助対象となるのは、補助事業の実施に直接必要な経費です。主な項目は以下のとおりです。
- 機械装置・システム構築費
新製品の製造やサービス提供に必要な機械、装置、専用ソフトウェア等の購入・設置費用 - 技術導入費
新技術の導入に係る知的財産権の実施許諾(ライセンス)に要する経費 - 専門家謝金・旅費
事業計画策定や技術導入のための外部専門家への謝金・旅費 - 運搬費
機械装置や資材等の搬入・輸送費 - 広告宣伝・販売促進費
新商品・サービスの広告掲載、展示会出展、販促用資料作成費用 - 研修費
新事業に必要な技能習得のための研修参加費 - 外注費
製品開発やデザイン等の外注業務費用
補助対象外となる主な経費
以下のような経費は補助対象になりません。
- 補助事業と直接関係のない経費(既存事業の通常経費など)
- 汎用性の高いパソコン、タブレット、スマートフォン等
- 事務所家賃や光熱費などの間接経費
- 従業員給与や人件費(研修費を除く)
- 中古品購入で、耐用年数や品質が確保できないもの
注意点
- 経費はすべて 補助事業期間内に発注・納品・支払・検収が完了 している必要があります。
- 発注先は原則として 第三者(親会社・子会社・関係会社は不可)です。
- 補助金は後払い方式(精算払)で、事業完了後の実績報告と検査を経て支払われます。
4. 公募スケジュール
新事業進出補助金は、令和7年度に初めて公募が開始された制度です。
第1回の募集はすでに終了しており、今後の実施サイクルは未定ですが、補助金事業の性質上、年度単位での公募継続が想定されます。
大まかなスケジュール感
今回の公募内容や補助金制度の一般的な流れから、以下のようなスケジュール感が想定されます。
- 公募開始
事務局ホームページで公募要領とともに募集が開始されます。
初回は4月下旬に開始。 - 申請受付期間
公募開始からおおむね1〜2か月間。
申請は原則 電子申請(jGrants) により行います。 - 審査・採択発表
申請締切から1〜2か月後に採択事業者が公表されます。 - 交付申請・事業開始
採択発表後、原則2か月以内に交付申請を行い、承認後に事業開始。 - 事業実施期間
交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内)。
年度をまたぐ場合もあります。 - 実績報告・補助金請求
事業完了後、実績報告書を提出し、確定検査を経て補助金が支払われます。
今後の実施見込み
- 今後も年度ごとの公募が継続する可能性は高いですが、実施時期や回数は年度の予算や政策方針によって変動します。
- 最新情報は、中小機構の特設サイトや経済産業省の公募情報ページで随時確認が必要です。
5. 申請要件
新事業進出補助金の申請には、対象者資格を満たし、事業計画や経営状況に関する要件をクリアする必要があります。
要件は必須要件・加点要件・特例要件に分かれます。
対象者
第2章で示したとおり、以下の条件を満たす事業者が対象です。
- 中小企業基本法に規定する中小企業者(会社・個人事業主・中小企業等協同組合 等)
- 日本国内に本社または主たる事業所を有すること
- 大企業、みなし大企業、反社会的勢力等は対象外
※ 中小企業の定義や対象外条件の詳細は第2章参照。
必須要件
新事業進出要件
- 「新事業進出指針」に沿った事業であること。
- 既存事業と異なる市場や製品・サービス分野への進出
- 製品・市場の新規性があること
付加価値額要件
- 補助事業終了後3〜5年間の事業計画期間において、付加価値額(または従業員一人当たり付加価値額)の年平均成長率4.0%以上 増加する見込みであること
- 付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
賃上げ要件
- 補助事業終了後3〜5年間の事業計画期間で、以下いずれかを満たすこと
- 一人当たり給与支給総額の年平均成長率が、都道府県最低賃金の直近5年間平均成長率以上
- 給与支給総額の年平均成長率が2.5%以上
- 未達の場合は補助金の一部返還義務あり。
事業場内最低賃金要件
- 事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準を維持すること。
経費・手続き要件
- 補助対象経費は第3章に定める範囲に限定。
- GビズIDプライムアカウントを取得済みであること(電子申請に必須)。
- 必要な許認可を申請時点で取得済みであること(該当する場合)。
- 1事業者あたり1件のみ申請可(同一公募回内)。
加点要件(該当する場合)
申請内容や事業者の状況に応じて審査時に加点されます。
- 賃上げ特例要件を満たす計画
- 「DX認定事業者」の認定
- 「先端設備等導入計画」の認定
- 「経営革新計画」の承認
- 「地域未来牽引企業」や「J-Startup」等の認定・選定実績
- 被災地域での事業実施(災害復興の観点から加点)
特例要件(補助上限額引上げ)
賃上げ特例
- 事業計画期間中に、以下の条件を満たす場合、補助上限額が最大+500万円加算されます。
- 給与支給総額を6.0%以上増加
- 事業場内最低賃金を年額50円以上引上げ
災害復興特例(該当地域のみ)
- 大規模災害の被災事業者で、一定の復興計画に基づき事業を行う場合、補助率や上限額の特例が適用されることがあります。
6. 事業計画書作成のポイント
新事業進出補助金では、事業計画書は審査の中心資料です。
評価は「新規性・波及効果」「実現可能性」「収益性・持続性」などの観点で行われます。
ここでは、本制度ならではの重点ポイントに絞って解説します。
補助金申請に必要な事業計画書の書き方の基本が知りたい方は、こちらもご覧ください↓
ポイントの概要
「新事業進出要件」を明確に説明する
- 既存事業との違いを市場面・製品サービス面の両方から説明
- 「新事業進出指針」に沿った新規性の根拠を記載
- 市場調査や業界動向データを引用して説得力を高める
「付加価値額4%以上増加」の根拠を示す
- 計画期間(3〜5年)の付加価値額試算表を作成
- 増加要因(設備導入による生産性向上、新市場売上の創出など)を具体的に記載
「賃上げ要件」と「事業場内最低賃金要件」を満たすことを示す
- 賃上げ率や最低賃金引上げ額を明確な数値で記載
- 実施方法(昇給時期、給与体系の改定方法)を示す
- 賃上げ特例を狙う場合は、給与支給総額6%以上増加・事業場内最低賃金年額50円以上引上げの実現方法を詳細に書く
加点要件を意識した計画づくり
- DX認定、先端設備等導入計画、経営革新計画などの認定取得予定を記載
- 被災地域での事業実施や地域未来牽引企業等のステータスがあれば明記
「波及効果」や「地域貢献」を強調
- 地域雇用の創出、地元企業との連携、新技術の地域内普及などをアピール
「実現可能性」を裏付ける
- 実施体制(担当部署・責任者・外部支援者)を明確化
- 補助事業期間(交付決定日から14か月以内/採択発表日から16か月以内)に合わせたスケジュールを提示
- 自己資金や融資見込み額を明記し、資金計画の確実性を示す
事業計画書チェックリスト(簡易診断用)
新事業進出補助金申請用の事業計画書の妥当性を簡易に診断するためのチェックリストです。ぜひご活用ください。
- 新事業進出要件を満たしている(市場・製品の両面で新規性あり)
- 付加価値額が年平均4%以上増加する根拠がある
- 賃上げ要件を満たす数値と実施方法が明確
- 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上(特例なら+50円)
- 設備・販路開拓・人材計画が補助事業期間内に完了可能
- 加点要件(DX認定、先端設備等導入計画、地域未来牽引企業等)に該当する
- 地域経済や雇用への波及効果を具体的に示している
- 実施体制・資金計画が現実的である
- 補助対象経費だけで構成され、対象外経費を含まない
- 必要な許認可を申請前に取得済み
7. 申請の流れ
新事業進出補助金は、電子申請(jGrants)でのみ受付されます。
ここでは、申請から補助金受給までの流れを7つのステップで解説します。
1. 事前準備
- GビズIDプライムアカウントの取得
電子申請に必須。取得には2〜3週間かかるため、早めに申請。 - 必要な許認可の取得
事業実施に必要な営業許可・資格等は、申請時点で取得済みであることが求められます。
必要に応じて行政書士に相談するとよいでしょう。 - 見積書・仕様書の準備(推奨)
見積書は申請時の必須書類ではありませんが、交付申請時には補助対象経費ごとに複数見積(50万円以上は原則3者)等が必要になります。
早めに取得を進めておくとスムーズです。
※ 費目によっては申請時から見積や根拠資料の提出が求められる場合があります(例:広告宣伝・販売促進費の一部)。
2. 申請書類の作成
申請時には、以下の書類を電子ファイル(PDF等)で準備します。
※採択後に必要となる書類は含みません。
必須提出書類(全申請者共通)
- 事業計画書(様式1号など)
- 補助事業計画に係る経費明細書
- 直近2期分の決算書(法人)または確定申告書(個人)
- 会社概要(法人登記簿謄本または履歴事項全部証明書等)
- 反社会的勢力でないことの誓約書
- GビズIDプライムアカウントによる電子署名(jGrants申請時に自動付与)
該当する場合のみ提出
- 許認可証の写し(事業に必要な許認可がある場合)
- 加点要件に関する証明書(DX認定通知書、先端設備等導入計画認定書、経営革新計画承認書等)
- 被災証明書(災害復興特例を利用する場合)
- 費目ごとの根拠資料(例:特定の広告宣伝・販売促進費に関する見積・仕様書等)
- その他、事務局が求めた追加書類
3. 電子申請(jGrants)
- jGrantsにログインし、事業情報・経費情報を入力。
- 必要書類を添付し送信。
- 締切日の18時が期限ですが、システム混雑やエラーを避けるため数日前の提出が推奨されます。
- 申請後は、jGrantsマイページで「申請完了」になっているか必ず確認。
4. 審査・採択結果の公表
- 事務局による書類審査(必要に応じて追加資料の提出依頼あり)。
- 審査は「新規性・波及効果」「実現可能性」「収益性・持続性」等について行われます。
- 採択結果は事務局ホームページおよびjGrantsで発表。
5. 交付申請・交付決定
- 採択発表後、原則2か月以内に交付申請を行います。
- この段階で補助対象経費ごとの見積書や価格妥当性証憑を提出。
- 交付決定通知を受けてから事業開始(それ以前の契約・発注は原則不可)。
6. 事業実施
- 交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内)に、発注・納品・支払・検収を完了。
- 発注先は原則として第三者(親会社・子会社・関係会社は不可)。
7. 実績報告・補助金請求
- 事業完了後、実績報告書と経費証憑を提出。
- 事務局の確定検査を経て、補助金が精算払で振込。
8. 採択の傾向とポイント
現時点での留意点
新事業進出補助金は、令和7年度に初めて実施された新制度です。
初回公募の採択結果はまだ公表されていないため、現時点では本制度固有の採択傾向や採択率データは存在しません。
以下の内容は、公募要領に示された審査基準および他の類似補助金の実績を参考にまとめたものです。
なお、今後、採択結果が公表された際には、本章の内容を最新の実績に基づいてブラッシュアップする予定です。
採択されやすい事業の特徴(類似補助金の傾向から)
- 新規性・独自性が明確
既存事業との違いがはっきりし、競合との差別化が可能である - 市場性・成長性が高い
市場規模や需要増加の根拠がデータで示されている - 実現可能性が高い
実施体制・資金計画・スケジュールが現実的で、事業期間内に確実に完了できる - 付加価値額・賃上げ要件を数値根拠付きでクリア
単なる目標値でなく、具体的な算定根拠が提示されている - 地域経済や社会的課題への貢献が明確
雇用創出、地域連携、環境配慮などの波及効果がある - 加点要件を複数満たしている
DX認定、先端設備等導入計画など
採択率の傾向(参考)
本制度の採択率は未公表ですが、制度設計や要件の多くは、令和2年度から実施されてきた事業再構築補助金の後継的な性格を持っています。
そのため、暫定的には事業再構築補助金の採択率が参考ベンチマークと考えられます。
制度名 | 年度 | 採択率 |
---|---|---|
事業再構築補助金 | R4年度 | 約40〜50% |
ものづくり補助金 | R4年度 | 約45〜55% |
小規模事業者持続化補助金 | R4年度 | 約50〜60% |
※ 制度の目的・予算規模・応募数によって変動します。本補助金の採択率はこれらと異なる可能性がありますが、現時点では事業再構築補助金の採択率を暫定的な目安とすることができます。
採択率を高めるためのポイント(公募要領から推測)
- 新事業進出要件の適合性を明確化
市場・製品の新規性を、数値やデータで裏付け - 数値計画の信頼性向上
付加価値額や賃上げ計画の根拠を試算表やエビデンス付きで提示 - 加点要件の積極活用
DX認定、先端設備等導入計画、経営革新計画等は申請前に取得 - 地域貢献・波及効果の強調
雇用創出や地域内企業との連携を具体的に示す - 読みやすく具体的な計画書
審査員が短時間で理解できる構成と表現にする
9. 採択後の流れと義務
新事業進出補助金は、採択された後も交付申請・事業実施・報告・要件達成までを含めて完了となります。
採択後に義務や条件を守らない場合、補助金の減額や返還が発生することがあります。
採択後の主な流れ
- 交付申請
採択発表後、原則2か月以内に交付申請を行います。
この際、補助対象経費ごとの見積書や価格妥当性証憑を提出します。 - 交付決定・事業開始
交付決定通知を受けてから事業を開始します(それ以前の契約・発注は原則不可)。 - 事業実施
交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月以内)に発注・納品・支払・検収を完了します。
事業内容や経費の変更が生じる場合は事前に変更申請が必要です。 - 実績報告
事業完了後、成果物・経費証憑・写真・支払記録などを添えて実績報告書を提出します。 - 確定検査・補助金請求
事務局の確認・検査を経て、補助金が精算払で支払われます。
採択後に守るべき義務
- 賃上げ要件の達成
事業計画期間(3〜5年)において、設定した賃上げ目標を達成すること。未達の場合は一部返還義務があります。 - 事業場内最低賃金の維持
地域別最低賃金+30円(特例の場合+50円)を維持すること。 - 付加価値額要件の達成
計画通りに付加価値額(または従業員1人当たり付加価値額)を増加させること。 - 経費の適正使用
補助対象外経費の支出や目的外使用は不可。 - 帳簿・証憑の保存
補助事業に関する書類は原則5年間保存。 - 事務局への報告義務
年次報告や計画達成状況の報告が求められる場合があります。
注意点
- 採択=補助金確定ではありません。交付申請を経て交付決定を受けてから事業開始となります。
- 事業内容や経費配分の変更は事前承認が必要です。無断変更は経費不認定や返還の対象になります。
- 賃上げ・最低賃金要件の達成は、採択後数年間にわたって追跡されます。
10. 注意点
申請や事業実施にあたっては、以下の点に十分注意してください。
違反や不備があると、不採択や補助金返還につながる場合があります。
経費の適正性
- 補助対象外の経費(汎用性の高い備品、交際費、税金、日常的な運転資金など)は計上できません。
- 契約・発注・支払いは必ず交付決定日以降に行ってください(例外は事務局承認がある場合のみ)。
- 採択後の交付申請時には、50万円(税抜)以上は原則2者以上から相見積を取得し、価格妥当性を説明できるようにします。
- システム構築費や広告宣伝・販売促進費など一部の費目は、仕様書や積算根拠付き見積の提出が求められます。
計画の実現性
- 事業計画が過大だと「実現可能性が低い」と判断されます。
- 自社の人員・資金・スケジュールで確実に実行できる計画を立てましょう。
- 納期・施工期間は事前に確認し、交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月以内)に完了できる計画とします。
申請書の記載内容
- 他事業や過去申請の流用は、整合性欠如や誤記につながります。
- 数値目標や効果は根拠付きで記載し、審査項目を網羅してください。
- 新事業進出要件や賃上げ要件など、制度固有の必須要件は必ず反映します。
特例や加点要件
- 賃上げ特例や加点要件(DX認定、先端設備等導入計画など)を記載する場合は、証拠資料が必須です。
- 賃上げ・最低賃金引上げ・付加価値額要件の未達は、補助金返還や減額の対象になります。
スケジュール管理
- 採択=補助金確定ではなく、交付決定後に事業開始です。
- 交付申請は採択後2か月以内、事業は交付決定から14か月以内に実施完了が必要です。
- 計画段階で余裕のあるスケジュールを組みましょう。
補助事業終了後の義務
- 計画期間中(3〜5年)、賃上げ要件・最低賃金要件・付加価値額要件を継続達成する必要があります。
- 効果報告が毎年度求められ、未達の場合は他補助金申請時の減点や返還リスクがあります。
- 補助事業で取得した設備等は、法定耐用年数まで処分制限があり、譲渡・廃棄・転用には事前承認が必要です。
その他の注意点
- 本補助金は電子申請(jGrants)のみ。GビズIDプライムアカウントが必須です。
- 他補助金との重複受給は禁止。同一内容での複数申請や、同一法人での同時申請はできません。
- 中小企業庁や事務局による現地調査が行われる場合があります。設備や証憑が確認できないと経費不認定となります。
11. よくある質問(FAQ)
Q1. 補助金はいつ支払われますか?
A. 補助事業が完了し、実績報告が承認された後に精算払いで支払われます。
事務局からの前払いはありません。
実績報告は、完了日から原則30日以内または完了期限の早い方までに提出します。
Q2. 応募申請時に見積書は必要ですか?
A. 原則不要です。
見積書は採択後の交付申請で必要になり、50万円(税抜)以上は原則2者以上の相見積、最低価格以外を選ぶ場合は理由書+価格妥当性資料を提出します。
費目によっては申請時から仕様書や積算根拠付き見積の提出を求められる場合があります。
Q3. 交付決定前に発注・契約・支払いをしてもいいですか?
A. 不可です。
交付決定前に行った契約・支出は補助対象外となります。
Q4. どんな経費が対象/対象外ですか?
A. 公募要領に記載された補助対象経費(機械装置費、システム構築費、広告宣伝・販売促進費など)に限られます。
一方、汎用性の高い備品や日常的な運転資金、交際費、既存システムの改修のみなどは対象外です。
Q5. 支払い方法に制限はありますか?
A. 銀行振込での支払実績により確認します。現金・手形は対象外、クレジットカードは原則不可です。
Q6. リースで導入できますか?
A. 原則不可です。ただし、ファイナンス・リース等で補助対象となる場合もあります。
対象可否や条件は公募要領で必ず確認してください。
Q7. 他の補助金と併用できますか?
A. 同一経費の重複受給はできません。
国や自治体等の他制度と併用する場合は、経費区分を明確にし、重複がないことを証明する必要があります。
Q8. 1つの公募で複数申請できますか?
A. 同一法人・事業者につき1申請のみです。酷似計画の重複申請等は申請制限の対象になる可能性があります。
Q9. 採択後に内容を変更できますか?
A. 大幅な内容変更や経費配分変更は事前承認が必要です。
軽微な変更は届出で対応できる場合もありますが、独断での変更は不可です。
Q10. 採択後の義務はありますか?
A. あります。
事業計画期間(3〜5年)の賃上げ要件・最低賃金要件・付加価値額要件の達成、年次効果報告の提出、帳簿・証憑の保存(原則5年間)などが義務です。
未達や未報告の場合、補助金返還や他補助金申請時の減点対象になります。
12. まとめ
新事業進出補助金は、中小企業や小規模事業者が新たな市場や事業分野へ進出するための挑戦を後押しする制度です。
始まったばかりの制度であり不明点は多いですが、事業再構築補助金の後継的な性格を持ち、新規性・市場性・実現可能性・地域貢献性が重要視される、という捉え方をしておきましょう。
事業再構築補助金と同様、競争の激しい制度になりそうですし、実施頻度も低そうですから、少ないチャンスを確実にものにするためにも入念な準備をしておきたいものです。
そのためには、GビズIDの早期取得、事業計画書の練り込み、加点要件の事前整備など、今できる準備を着実に進めておきましょう。
事務所では、本制度の活用に向けた事業計画書作成支援や申請サポートを行っています。
初回相談は無料ですので、
- 制度の詳細を知りたい方
- 自社が申請対象になるか確認したい方
- 事業計画書や必要書類の準備に不安がある方
はお気軽にお問い合わせください。
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免責
本ガイドは公開情報に基づいた概要です。最新の要件・様式・受付状況は、必ず公式サイトおよび最新の公募要領でご確認ください。内容は予告なく変更される場合があります。