補助金コンサルの選び方|失敗事例から学ぶ注意点と、数字だけに頼らない判断基準

1. はじめに

補助金申請は、中小企業や個人事業主にとって貴重な資金調達の機会です。
しかし、そのプロセスは複雑で、制度理解、事業計画の策定、書類作成、採択後の報告など、多くの工程をクリアする必要があります。

こうした負担を軽減し、採択率を上げるために、多くの事業者が補助金コンサルを利用します。
ところが、コンサル選びを間違えると、時間や費用の無駄にとどまらず、補助金返還や信用失墜という重大なリスクに直面することもあります。

本記事では、コンサルを使ったにもかかわらず失敗した事例を紹介し、そこから学べる注意点を整理します。
さらに、採択実績が少ない場合や不明な場合でも安心して任せられるコンサルを見極めるための「数字だけに頼らない判断基準」も解説します。


2. コンサルを使ったのに失敗した事例

失敗事例を3つ紹介します。いずれも仮想事例ですが、実際の補助金申請現場では残念なことによく見られるパターンです。

事例1:申請書の内容が事業実態と合わず不採択に

  • 業種:飲食業
  • 背景:コロナ禍で売上が減少。新事業として冷凍食品のネット販売を計画し、コンサルに申請を依頼。
  • 失敗要因:コンサルが過去案件のテンプレートを流用し、実際の事業計画と乖離した内容になっていた。審査員から「実現可能性に乏しい」と評価され、不採択に。
  • 影響:申請準備にかけた時間・費用が無駄に。販売計画の再検討を余儀なくされた。
  • 教訓
    • ヒアリングを重視し、依頼者の事業内容を正確に把握してくれるコンサルを選ぶ。
    • 事業の方向性や背景をしっかり共有し、申請書案を一緒にレビューする機会を持つ。

事例2:要件の確認不足で対象外経費を計上

  • 業種:小売業
  • 背景:店舗改装費用を補助金でまかなおうと計画し、コンサルの助言を受けながら申請。
  • 失敗要因:対象経費の要件確認が不十分で、交付決定前に契約・発注してしまった。結果的にその支出が全額対象外に。
  • 影響:補助金が使えず、予定外の自己資金を投入することに。資金繰りが悪化。
  • 教訓
    • 制度要件や申請スケジュールに精通し、最新情報を常に把握しているコンサルを選ぶ。
    • 重要な制度ルールや経費要件は、コンサルから説明を受けて書面でも確認する。

事例3:採択後の事務対応不足で補助金返還

  • 業種:製造業
  • 背景:新設備導入のための補助金に採択されたが、報告業務をほぼコンサル任せに。
  • 失敗要因:コンサルとの役割分担が不明確で、必要な証憑書類が期限内に提出できなかった。
  • 影響:補助金の一部返還命令を受け、取引先からの信用も低下。
  • 教訓
    • 採択後のフォローや報告業務にも対応できる「伴走型」のコンサルを選ぶ。
    • 報告書類や証憑の準備は役割分担を明確にし、期限前に進捗確認を行う。

失敗事例比較表

事例業種主な失敗要因影響教訓(対策)
事例1:申請書の内容が事業実態と合わず不採択に飲食業コンサルが過去案件のテンプレートを流用し、実際の事業計画と乖離不採択で時間・費用が無駄に、計画の再検討を余儀なくされた・ヒアリングを重視し、依頼者の事業内容を正確に把握してくれるコンサルを選ぶ。
・事業の方向性や背景をしっかり共有し、申請書案を一緒にレビューする機会を持つ。
事例2:要件の確認不足で対象外経費を計上小売業交付決定前に契約・発注してしまい、対象外経費となった補助金が使えず、予定外の自己資金負担で資金繰り悪化・制度要件や申請スケジュールに精通し、最新情報を常に把握しているコンサルを選ぶ。
・重要な制度ルールや経費要件は、コンサルから説明を受けて書面でも確認する。
事例3:採択後の事務対応不足で補助金返還製造業証憑書類が期限内に提出できず、役割分担が不明確補助金の一部返還、取引先からの信用低下・採択後のフォローや報告業務にも対応できる「伴走型」のコンサルを選ぶ。
・報告書類や証憑の準備は役割分担を明確にし、期限前に進捗確認を行う。

3. 数字だけに頼らず、信頼できる補助金コンサルを選ぶための判断基準

採択件数や採択率などの数値実績は比較がしやすく、コンサルを選ぶ時の基準として使われがちです。
確かに数字は参考になりますが、採択の難易度は申請する補助金の種類やその年の公募回数、競争率によっても変動します。
いちいち数字を出していないコンサルの方が多いですし、ひょっとすると「盛っている」コンサルもいないとは限りません。
そのため、単純な数値比較だけでコンサルの優劣を判断すると、思わぬ落とし穴にはまることもあります。

では、実績が不明なコンサルや少ないコンサルでも「この人なら任せられる」と判断できるのは、どんな場合でしょうか。
ここでは、数字以外で信頼を見極めるための5つの視点を、先ほどの失敗事例と絡めながら解説します。

5つの視点

1. 制度選択力

補助金には多くの種類があり、対象経費や要件がそれぞれ異なります。
依頼者の事業内容や経営課題を踏まえて、最適な制度を選べるかどうかは成功の大前提です。
もしこの力が欠けていれば、事例1のように事業計画と申請内容がずれて不採択という結果を招きかねません。

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2. 加点要素の理解

補助金には「賃上げ計画」「DX」「環境対応」など、年度ごとに変わる加点要素があります。
これらを理解し、申請書に反映できるコンサルは強みになります。
逆に、この視点が抜けていると、競争が激しい制度では採択の可能性を自ら下げてしまうことになります。

3. 伴走型のサポート姿勢

申請書作成だけでなく、採択後の実績報告や事業遂行まで継続的に支援してくれるか。
この姿勢があれば、事例3のように役割分担があいまいで報告期限を逃すといった失敗を防げます。
特に初めて申請する場合は、伴走型かどうかが安心感につながります。

4. 情報更新力

制度改正や募集開始日などの最新情報を迅速にキャッチし、共有できる力です。
この力があれば、事例2のように要件の見落としで対象外経費を計上するといった致命的なミスは避けられます。
情報感度の高さは、申請のタイミングや内容の精度にも直結します。

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5. ヒアリング力

事業内容や現状課題を深く理解するためのヒアリングが丁寧かどうか。
単なるひな形を埋めるのではなく、依頼者ごとの強みや独自性を引き出してくれるコンサルは、審査員の心に響く申請書を作れます。
この力があれば、事例1のような「事業実態と申請内容の乖離」も防げるでしょう。

小括

このように、数字以外の基準も考慮してコンサルを選ぶことで、失敗事例に見られる典型的なリスクを回避できます。
「何を基準に判断すべきか」を意識すれば、実績が不明なコンサルや少ないコンサルであっても安心して任せられる相手か。

4. チェックリスト:契約前に確認すべきこと

  • □ 制度選択の理由を説明してくれるか
  • □ 最新の加点要素を把握しているか
  • □ 採択後までサポートがあるか
  • □ 制度改正などの情報をすぐに共有してくれるか
  • □ 丁寧なヒアリングを行ってくれるか

5. まとめ

補助金コンサルは、制度理解や書類作成の負担を軽減し、採択率を高めてくれる心強い存在です。
しかし、選び方や付き合い方を誤れば、時間や費用の無駄だけでなく、補助金返還や信用失墜といった深刻なリスクにもつながります。

今回紹介した3つの失敗事例から見えてくるのは、「適切なコンサルを選び、適切に活用すること」の重要性です。

  • コンサルの選び方のポイント
    • 事業内容を的確に把握してくれる
    • 制度要件や最新情報に精通している
    • 採択後のフォローにも対応できる伴走型である
  • コンサルの活用のポイント
    • 情報や資料は積極的に共有し、申請内容を一緒に確認する
    • 制度ルールや経費要件は書面でも確認する
    • 報告業務や証憑準備は役割分担を明確にして進捗管理を行う

数字や過去実績だけで判断するのではなく、これらの条件を満たすコンサルを見極め、二人三脚で進めることが、補助金活用の成功への最短ルートです。

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