中小企業の新たな取り組みに「経営革新計画」!補助金との相乗効果で挑戦をさらに加速
中小企業が新商品や新サービス、新しい分野への挑戦をするときに役立つ制度のひとつが 「経営革新計画」 です。
都道府県知事の承認を受けることで、金融支援や地域でのPRといったメリットが得られるほか、補助金申請時にも相乗効果を発揮します。
特に、ものづくり補助金や新事業進出補助金といった「新たな取り組みを後押しする補助金」とは制度趣旨が近く、申請の準備や審査においてプラスに働くケースがあります。ものづくり補助金においては、申請締切日時点で有効な「経営革新計画」の承認を受けていれば、加点対象になります。
本記事では、経営革新計画の概要、補助金との関係、申請の流れや注意点まで分かりやすく解説します。
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経営革新計画とは?
制度の概要
経営革新計画とは、中小企業が「新商品・新サービスの開発」「新たな生産方式や販売方式の導入」など、革新的な取り組みを行う際に、その計画を都道府県知事に承認してもらえる制度です。
「新規事業の立ち上げ」に限らず、既存事業の中で新たな製品やサービスを打ち出す場合も対象になります。
メリット
- 金融支援が受けやすくなる
- 信用保証協会による保証枠の拡大や保証料の軽減
- 政策金融公庫の低利融資
- 自治体の制度融資での優遇条件
承認を受けることで、資金調達に関する支援が利用可能になります。ただし、支援内容は自治体によって異なるので、申請前に確認しましょう。
例えば、神奈川県の経営革新支援融資では、経営革新計画承認企業向けに 最大8,000万円(協同組合は1億2,000万円)まで、固定金利2.3%以内 の融資に申し込めます。
→ こうした制度を通じて、新しい取り組みに必要な資金調達が有利になるのが大きな魅力です。
- 地域でのPR効果
承認企業として、都道府県や自治体のHP、広報誌などに掲載される場合があります。また、優良事例としてイベント等で紹介されるケースもあります。
ただし、このPR効果は自治体によって対応に差があり、「必ず紹介される」とは限りません。 - 副次的なメリット
- 計画を作る過程で、自社の強み・弱みを整理できる
- 成長の数値目標(売上や付加価値の伸び率など)を設定できる
- 公的なお墨付きを得ることで、金融機関や取引先に対する信頼度が高まる
デメリット
- 審査が比較的厳しく、時間がかかる
「革新性」や「成長性」を厳しくチェックされるため、承認までに数か月を要することがあります。 - 申請準備に多くの手間と労力がかかる
革新性や数値目標を論理的に整理し、計画書に落とし込む必要があるため、専門的な知識や書類作成スキルが求められます。
経営革新計画と補助金の関係
経営革新計画は「新商品・新サービス開発」「新分野進出」といった挑戦を後押しする制度です。
多くの補助金が重視している評価基準も「革新性」「新たな取り組みへの投資」であり、方向性が共通しています。
そのため、経営革新計画を承認取得しておくことで、補助金申請において以下のようなメリットが得られます。
補助金申請におけるメリット
- 申請書の作成が効率化する
経営革新計画で整理した「現状・課題・数値目標」をベースにできるため、補助金申請書の作成をスムーズに進められます。 - 審査で安心感を与えられる
「都道府県知事に承認された計画」を持っていることで、審査員に対して「公的に認められた事業計画」として信頼感を与えられます。 - 一部補助金では加点対象になる
特に代表例が「ものづくり補助金」です。申請締切日時点で有効な「経営革新計画」の承認を受けていれば、加点対象になり、採択率アップにつながります。
相性の良い補助金
- ものづくり補助金
制度趣旨が「革新的な取り組み」に重点を置いており、経営革新計画と親和性が高いです。承認済み計画は加点対象となります。 - 新事業進出補助金
中小企業基盤整備機構が実施する国の制度で、新規分野への進出を支援するものです。経営革新計画と内容が重なる部分が多く、計画を申請書に活かしやすい補助金です。
補助金+金融支援を組み合わせた資金調達
経営革新計画の金融支援と補助金を組み合わせることで、設備投資に必要な資金調達をスムーズに進めることができます。
例えば、ものづくり補助金で投資額の一部を補助し、自己負担分については経営革新計画承認企業向けの制度融資(例:神奈川県の制度融資では最大8,000万円、利率年2.3%以内)を活用する、といった形です。
このように「補助金でコストを抑え、金融支援で資金調達を安定させる」ことで、新しい挑戦の実行可能性が高まります。
まとめ
経営革新計画を取得しておくことで、
- 補助金申請の書類作成が効率化できる
- 審査で信頼性を高められる
- ものづくり補助金では加点により採択率アップ
- 補助金と金融支援を組み合わせて設備投資を進めやすくなる
といった効果が期待できます。
つまり、補助金を活用したい企業にとって、経営革新計画は「申請を有利にし、資金繰りを後押しする」制度といえるでしょう。
経営革新計画の申請の流れ
申請の流れ(概要)
- 計画の検討・作成
- 事前相談(任意、自治体による)
- 申請書の提出
- 審査・承認
- 承認後のフォロー
各ステップの詳細
Step 1. 計画の検討・作成
- 自社の現状、課題、強み・弱みを整理
- 新たな取り組み(新商品・サービス、生産や販売の新しいやり方の導入など)を明確化
- 3〜5年後の数値目標(売上、付加価値、給与総額など)を設定
👉 単なる事業計画ではなく、「革新性」と「成長性」を示すことがポイントです。
Step 2. 事前相談(任意)
- 自治体の窓口で内容を確認できる
- 不備や弱点を指摘してもらい、改善してから申請するとスムーズ
Step 3. 申請書の提出
- 計画書、会社概要、決算書などを都道府県の担当部署へ提出
- 電子申請・郵送・持参など方法は自治体によって異なる
Step 4. 審査・承認
- 専門家・有識者による審査
- 革新性や成長性、実現可能性が重点的にチェックされる
- 承認までに数か月を要することもある
- 承認率(申請数に対する通過率)は公表されていないため不明。承認件数のデータについては公表されている
Step 5. 承認後のフォロー
- 承認後は計画に沿って取り組みを実行
- 必要に応じて進捗報告を求められることもある
- 承認済み計画をもとに補助金申請や金融支援を活用可能
申請前に確認したいチェックリスト
経営革新計画は、承認を受けるために 「革新性」「数値目標」「実現可能性」 を明確に示す必要があります。
単なる計画ではなく、公的に認められる計画として一定の水準が求められる点が大きな特徴です。
申請に取り組む前に、次の観点を確認しておくとよいでしょう。
✅ チェック1:革新性があるか
- 単なる改良や小規模な改善ではなく、新商品・新サービスの開発や新しい生産・販売方式の導入といった取り組みになっているか?
- 他社との差別化や独自性を示せるか?
✅ チェック2:数値目標を示せるか
- 3〜5年後に達成すべき 売上高や付加価値額、給与総額 の数値目標を設定できるか?
- その目標に合理的な根拠を持たせられるか?
✅ チェック3:実現可能性があるか
- 必要な人材、技術、資金の裏付けがあるか?
- 絵に描いた餅ではなく、実行に移せる計画として説明できるか?
✅ チェック4:資金調達の見込みはあるか
- 計画を実行するための資金をどう確保するか、見通しを立てられているか?
- 自己資金、金融機関の融資、補助金や制度融資など、利用可能な手段を踏まえて現実的に説明できるか?
✅ チェック5:社内体制は整っているか
- 経営者だけでなく現場も巻き込み、組織として計画を推進できる体制があるか?
- 計画の進捗をモニタリングし、数値を管理できる仕組みがあるか?
まとめ
経営革新計画は、「革新性」「数値目標」「実現可能性」の3点を満たせるかどうかが審査の大きなカギです。
これらをクリアできれば、計画自体が成長戦略の道しるべとなり、必要に応じて補助金や金融支援、地域でのPRなどの公的サポートも活用しやすくなります。
さいごに
経営革新計画は、新商品や新サービスの開発、新分野進出といった「挑戦」を後押しする制度です。
承認を受けることで、金融支援や地域でのPRといった直接的なメリットに加え、補助金申請における効率化や加点などの相乗効果も期待できます。
一方で、審査は比較的厳しく、承認までに数か月を要することもあります。計画づくりの過程で「革新性」「数値目標」「実現可能性」を明確に示せるかが大きなカギとなります。
とはいえ、こうしたプロセスを経て承認を得ることは、単なる支援のためだけでなく、自社の成長戦略を整理し、社内外に「挑戦する企業」としての姿勢を示す機会にもなります。
新たな取り組みを検討している中小企業にとって、経営革新計画は補助金や金融支援と組み合わせながら挑戦を加速させる有効な選択肢のひとつです。
💡関連記事:経営力向上計画の解説はこちら↗
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