経営力向上計画は補助金+税制優遇の二重取り!設備投資する中小企業必見
当ブログではこれまで、設備投資を検討する中小企業に向けて「ものづくり補助金」など主要な補助金の活用をおすすめしてきました。
しかし実は、補助金だけでなく 税制優遇まで同時に狙える制度 があるのをご存じでしょうか?
それが「経営力向上計画」です。
国から認定を受けることで、
- 補助金申請の際に有利になる
- 補助金でカバーしきれない投資部分を、税制優遇でさらに後押しできる
といった“ダブルの効果”が期待できるのです。
本記事では、設備投資を考えている中小企業にとって相性抜群の制度「経営力向上計画」について、仕組みからメリット、補助金との関係までわかりやすく解説します。
経営力向上計画とは?
「経営力向上計画」とは、中小企業等経営強化法に基づき、中小企業や小規模事業者が「自社の生産性向上」を目的にまとめた計画を主務大臣に認定してもらう制度です。
対象となる取組は幅広く、
- 人材育成(従業員教育やスキルアップ)
- 設備投資(新しい機械やシステムの導入)
- IT活用(生産管理システムや業務効率化ツールの導入)
- 業務プロセスの改善(業務フローや組織体制の見直し)
など「生産性向上につながる取組」であれば申請可能です。
経営力向上計画は、中小企業基本法で定義された中小企業・小規模事業者であれば、ほぼすべての業種が対象です。
特別な資格や条件はなく、必要なのは「生産性を年率1%以上向上させる取組を計画に盛り込むこと」。
そのため、中小企業で設備投資やIT導入を検討している会社なら、幅広く利用できる制度です。
経営力向上計画認定で受けられる支援措置
- 税制支援
- 即時償却や税額控除(経営強化税制)
- 対象設備を導入した場合、取得価額の全額をその年の経費にできる(即時償却)、または取得価額の10%を税額から控除できる(※中小企業の場合)。
- 例:機械設備を1,000万円で導入 → 即時償却すれば課税所得1,000万円を圧縮できる → 実効税率30%と仮定すると300万円の節税効果。
- 固定資産税の軽減(最大3年間1/2)
- 認定を受けた新規取得設備について、固定資産税が3年間、最大1/2に軽減。
- 例:対象設備に年間固定資産税40万円がかかる場合 → 半額の20万円に軽減 → 3年間で60万円の軽減効果。
- 不動産取得税の軽減
- 工場や事務所用の建物取得にかかる不動産取得税(通常3%~4%)が、軽減措置によりゼロまたは減額。
- 例:3,000万円の不動産を取得 → 本来の税額約90万円が軽減。
- 👉 設備投資をすればするほど、この税制優遇のメリットを最大限に受けられます。補助金で自己負担を減らしたうえで、その自己負担分に対して税制優遇を適用できるのがポイントです。
- 即時償却や税額控除(経営強化税制)
- 金融支援
- 日本政策金融公庫による低利融資
- 設備投資や運転資金について、通常より低い利率で融資を受けられる。
- 例:3,000万円を年利2.0%で借入 → 特例で1.2%に低下 → 年間利息差額は24万円 → 10年借入なら約240万円の利息軽減。
- 信用保証協会の保証枠拡大
- 通常の保証枠(2億円)がプラス2億円まで拡大。
- これにより、大型投資の資金調達がしやすくなる。
- 👉 補助金だけでは通常、投資の一部しかカバーできませんが、こうした金融支援を組み合わせることで資金調達が容易になります。
- 日本政策金融公庫による低利融資
- 法的支援
- 許認可承継に関する特例措置
このように、設備投資に補助金を使う企業にとって、経営力向上計画は「税制優遇と金融支援を上乗せできる制度」であり、補助金と組み合わせてフル活用することで効果を最大化できるのです。
制度の副次的なメリット
経営力向上計画は、前節で解説した支援措置を受けられるだけでなく、計画づくりのプロセスや認定を受けること自体にも大きな意味があります。
- 自社の強み・弱みを整理できる
- 生産性向上の数値目標を立てられる
- 国から認定を受けることで金融機関や取引先への信頼度が高まる
つまり、自社の強み・弱みや数値目標を可視化したり「国のお墨付き」を得ることで資金調達や取引先への説明がスムーズになり、経営改善と信頼性向上を同時に実現できる制度といえます。
さらに、認定を取得していることで、次章で解説するように、将来の成長投資や挑戦の場面でもプラスになることがあります。
経営力向上計画と補助金の関係
経営力向上計画は、税制・金融・法的支援を受けられるだけでなく、補助金申請との相性が抜群です。
多くの補助金は「生産性向上」「新たな挑戦への投資」を評価基準にしています。
経営力向上計画はまさにその方向性と一致しているため、計画を策定しておくことで、補助金申請の際に大きなメリットが得られます。
さらに、補助金を活用して設備投資を行う場合に、前章で説明した支援措置を利用することで、補助金+税制優遇の二重取りや、さらに金融支援をプラスした三重取りも狙えます。
補助金申請におけるメリット
- 申請書の作成がスムーズになる
- 計画で整理した「現状・課題・数値目標」をそのまま申請書に活用できるため、書類づくりが効率化します。
- 審査で安心感を与えられる
- 「国の認定を受けた計画」を持っていることで、審査員に対して「しっかりした企業」という印象を与えられます。
- 一部補助金では加点対象になる
- 直近の代表例としては「小規模事業者持続化補助金(一般型・通常枠)」があり、経営力向上計画の認定を受けていると加点を得られます。
補助金+税制優遇の“二重取り”
補助金で設備投資を行う場合、経営力向上計画を認定取得しておくことで税制優遇を上乗せできます。
例:
- 1,000万円の設備投資
- 補助金で 500万円補助
- 自己負担 500万円
👉 この自己負担分500万円について、
- 即時償却(課税所得の圧縮)
- 税額控除(最大10%控除)
- 固定資産税の軽減(3年間で半額)
などの支援を適用できるのです。
つまり、「補助金で投資額を減らし、残りの自己負担には税制優遇」という二重取りが可能になります。
さらに金融支援を加えた“三重取り”
補助金で投資額を抑え、税制優遇で負担を減らしたとしても、自己資金だけでは賄えないケースもあります。
その場合に使えるのが、日本政策金融公庫の低利融資や信用保証協会の保証枠拡大といった金融支援です。
つまり、ケースによっては
- 補助金
- 税制優遇
- 金融支援
を組み合わせた 「三重取り」 も実現可能です。
まとめ
経営力向上計画を取得することで、
- 補助金申請の書類作成がスムーズになる
- 審査の際の印象がアップする
- 一部補助金で加点が受けられる
- 補助金+税制優遇の二重取りが可能
- 金融支援を組み合わせれば三重取りも可能
となります。
👉 設備投資を補助金で行う中小企業にとって、経営力向上計画は「補助金をもっと活かすための必須制度」といえるでしょう。
経営力向上計画の申請の流れ
経営力向上計画の申請は、大まかに言えば「計画を作る → 提出する → 認定を受ける」という流れです。
複雑そうに見えますが、ステップごとに整理するとシンプルです。
ステップ1:自社の現状分析
まず、自社の経営状況や課題を整理します。
売上や従業員数、生産性指標(労働生産性の数値)を確認し、「どこを改善すれば生産性が高まるか」を明確にします。
ステップ2:計画書の作成
次に、公式フォーマットに沿って計画書を作成します。主な記載項目は以下の通りです。
- 企業の基本情報
- 現状の課題と改善方針
- 生産性向上のための取り組み(設備投資・人材育成・IT活用など)
- 数値目標(3~5年後に労働生産性を年率1%以上向上させる など)
👉 この「数値目標」と「改善施策」の整合性を示すことがポイントです。
ステップ3:所轄官庁への提出
完成した計画書を、業種ごとに担当する主務大臣(=所轄官庁)に提出します。
たとえば:
- 製造業 → 経済産業省
- 建設業 → 国土交通省
- 農業 → 農林水産省
など、業種ごとに提出先が異なります。
ステップ4:審査・認定
提出後、1~2か月程度で審査が行われ、問題がなければ「認定通知書」が交付されます。
この通知書が、税制優遇や金融支援を受ける際の証明書となります。
審査といっても特に高いハードルではなく、基本的には書類の不備がなければ通りやすい制度です。
申請のポイント
- 数値目標が現実的かつ明確か
- 取組内容が生産性向上とつながっているか
- 書類の不備がないか
この3つを押さえることで、認定される可能性がぐっと高まります。数値目標や取組内容は「現実的かつ生産性向上に資するもの」であれば認定されやすいため、実態に即した計画をしっかり記載することが大切です。
まとめ
経営力向上計画の申請は「現状分析 → 計画書作成 → 提出 → 認定」というシンプルな流れです。
数値目標と施策の整合性を意識すれば、中小企業でも十分に申請・認定を狙えます。
申請前に確認したいチェックリスト
経営力向上計画は、中小企業にとってメリットの大きい制度ですが、申請にあたっては事前に確認しておきたいポイントがあります。
以下のチェックリストを活用して、自社の準備状況を見直してみましょう。
✅ チェックリスト
- □ 設備投資や人材育成など、生産性向上につながる取組を検討しているか
→ 単なる現状維持ではなく、「改善につながる内容」である必要があります。 - □ 労働生産性の数値目標を設定できるか
→ 3〜5年後に年率1%以上の向上を目標にすることが求められます。 - □ 補助金活用を検討しているか
→ 補助金と組み合わせることで、税制優遇や金融支援との二重取り・三重取りが可能になります。 - □ 自己負担分の投資をどうカバーするか検討しているか
→ 補助金で全額は賄えないため、金融支援や自己資金も含めて計画を立てる必要があります。 - □ 所轄官庁(経済産業省・国土交通省・農林水産省など)を確認したか
→ 業種によって提出先が異なるため、事前に確認が必須です。 - □ 書類作成にあたって不備がないか確認できる体制があるか
→ 基本的な様式に沿って正しく記入すれば、認定のハードルは高くありません。
まとめ
経営力向上計画は「補助金+税制優遇+金融支援」を組み合わせて使える、中小企業にとって非常にお得な制度です。
しかし、申請内容が「生産性向上」と結びついていなければ認定は難しくなります。
👉 上記のチェックリストを確認しながら、早めに準備を始めることが成功のカギとなります。
さいごに:補助金とセットで活用すれば効果倍増
経営力向上計画は、単なる計画書ではなく、
- 税制優遇(即時償却・固定資産税軽減など)
- 金融支援(低利融資・保証枠拡大)
- 補助金申請との相乗効果
といった多くのメリットが得られる制度です。
特に、設備投資を補助金で行う場合には、補助金+税制優遇の二重取りやさらに金融支援をプラスした三重取りも可能になり、負担を大幅に軽減できます。
また、計画を作成する過程で自社の課題や数値目標を整理できるため、経営改善にもつながります。
👉 「設備投資を考えている」「補助金を活用したい」という中小企業にとって、経営力向上計画はまさに取り組んで損のない制度といえるでしょう。
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本記事の執筆者
朝倉とやまコンサルティング事務所の代表・朝倉傑が本記事を執筆しました。
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