1. 制度の概要
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)は、人手不足に悩む中小企業等が、IoT機器やロボットなどの汎用製品を活用して業務を効率化し、生産性を高めるための投資を支援する国の補助制度です。
令和5年度から3年間を「変革期間」と位置づけ、売上拡大や生産性向上を通じて賃上げにつなげることを目的としています。対象となる製品は、あらかじめ「省力化製品カタログ」に登録されており、中小企業等はこの中から製品を選び、販売事業者と共同で申請します。
この仕組みにより、
- 手続きが簡単で導入までが早い
- 即効性のある省力化投資が可能
- 導入効果の高い製品が厳選されている
といった特徴があります。
主要な用語の定義
- カタログ:補助対象として事前登録された省力化製品のリスト。
- 製品カテゴリ:同じ業務用途・性能を持つ製品群の分類。
- 省力化製品:カタログ掲載のIoT機器やロボット等。
- 製造事業者:省力化製品を製造する事業者または国内総代理店。
- 販売事業者:製品販売や導入サポートを行い、中小企業等と共同申請する事業者。
- 対象リース会社:(公社)リース事業協会の確認を受けたリース会社。
- 補助事業者:カタログ掲載製品を導入し、省力化に取り組む中小企業等。
2. 補助対象となる事業者
本事業の補助対象は、中小企業者等に該当する事業者です。
「中小企業等経営強化法」に基づき、業種ごとに以下の資本金または従業員数の上限が定められています。
- 製造業・建設業・運輸業:資本金3億円以下 または 従業員300人以下
- 卸売業:資本金1億円以下 または 従業員100人以下
- 小売業:資本金5千万円以下 または 従業員50人以下
- サービス業:資本金5千万円以下 または 従業員100人以下
個人事業主も、上記の業種ごとの従業員数要件を満たせば対象になります。
また、医療法人、社会福祉法人、商工会・商工会議所、農業協同組合、NPO法人なども、一定の条件を満たす場合は申請可能です。
3. 補助対象経費と補助額
補助対象となる経費
本事業では、省力化製品カタログに掲載された製品の購入またはリースにかかる経費が補助対象です。
- カタログ掲載のIoT機器、ロボットなどの省力化製品
- 購入の場合:製品本体価格(税抜)が対象
- リースの場合:対象リース会社との契約に基づくリース料(補助事業期間に対応する部分)
※カタログにない製品や、設置工事費、消耗品費、保守契約費などは原則対象外です。
補助額と補助率
従業員数 | 補助率 | 補助上限額 | 大幅な賃上げ達成時の上限額 |
---|---|---|---|
5人以下 | 1/2以内※ | 200万円 | 300万円 |
6~20人以下 | 同上 | 500万円 | 750万円 |
21人以上 | 同上 | 1,000万円 | 1,500万円 |
※省力化製品の購入価格が製品ごとの設定補助上限額の2倍を超える場合、補助率は1/2未満となります。
注意事項
- 補助額は25万円未満では申請できません(ただしリース契約の場合を除く)
- 補助対象経費に補助率を乗じた額が上限額を超える場合、上限額の範囲内で補助金が交付されます
- 上限額の判定は交付申請時点の従業員数で行います
4. 公募スケジュール
本事業の申請受付は、令和8年9月末頃まで随時行われます。
カタログへの製品・製造事業者・販売事業者の登録は、公募受付終了の半年前程度まで可能です。
主なイベント
- 本事業は通年での申請受付が可能ですが、年度内に複数回の採択審査が行われる場合があります。
- 採択後、補助事業の実施期間は交付決定日から原則12か月以内です。
- 効果報告は補助事業終了後、毎年度の期限までに計3回提出が必要です(事業計画期間3年間)。
申請タイミングのポイント
- 補助事業の準備期間を確保するため、早めの申請が推奨されます。
- 年度末に近づくと、審査や手続きが集中し、交付決定から事業実施までの期間が短くなる場合があります。
5. 申請要件
本事業への申請は、中小企業等と販売事業者(必要に応じて対象リース会社)が共同で行います。申請はすべて電子申請システムを通じて行い、採択審査を経て交付決定を受けます。
申請要件の詳細
申請時には、次の条件を満たしている必要があります。
- 補助対象事業者(中小企業者等)の定義に該当すること
- カタログ掲載製品を導入する計画があること
- 事業計画期間中に賃上げを行う意思を有すること
- 暴力団等反社会的勢力でないこと
- 税金を滞納していないこと
- 不正受給などで処分を受けた履歴がないこと
- 補助事業終了後3年間、効果報告を行うこと
事業計画書作成のポイント
採択を得るためには、事業計画書の質が重要です。特に以下の点を意識してください。
- 労働生産性向上の根拠を明確に
- 省力化効果を数値で示す(作業時間削減率、必要人員の削減効果など)
- 賃上げ計画の具体性
- 賃上げ率や時期、対象者範囲を明確に記載
- 実現可能なスケジュール
- 製品の発注、納品、稼働開始までの工程を現実的に設定
- 効果の波及性
- 売上増、新サービス創出など、省力化以外の副次的効果も記載すると評価向上
採択されるためのチェックポイント
申請内容は、中小機構による審査で以下の観点から評価されます。事業計画書を作成する際は、次の項目を意識しましょう。
1. 事業の有効性
- 製品導入によって労働時間削減や業務効率化が明確に見込めるか
- 単なる工数削減にとどまらず、売上拡大や付加価値向上につながるか
- 他の事業者のモデルとなるような波及効果が期待できるか
2. 実現可能性
- 導入スケジュールが現実的で、補助事業期間内に完了できる計画か
- 必要な資金や人員体制が確保されているか
- 関係者(販売事業者・リース会社)との連携体制が整っているか
3. 賃上げへの取組
- 事業計画期間中に賃上げを実施する意思が明確に示されているか
- 大幅な賃上げ(上限額引き上げ条件)を満たす計画かどうか
4. 数値目標と根拠
- 労働生産性の向上目標が数値で設定されているか
- 目標値の根拠が客観的なデータや実績に基づいているか
6. 申請の流れ
本事業への申請は、中小企業等と販売事業者(必要に応じて対象リース会社)が共同で行います。
申請はすべて電子申請システムを通じて行い、採択審査を経て交付決定を受けます。
1. カタログから導入製品と販売事業者を選定
省力化製品カタログの中から対象製品を選び、販売事業者を決定します。
2. 申請書類を作成
事業計画書は、販売事業者と共同で作成します。事業計画書には導入目的、省力化効果、賃上げ計画、導入スケジュールなどを具体的に盛り込みます。
必要書類(電子申請時)
- 事業計画書(販売事業者と共同作成)
- 過去2年分の損益計算書、1年分の貸借対照表
- 直近の決算・賃金に関する情報(期末時点の事業年度値、直近月の値)
- 労働生産性の計画値
- 一人当たり勤務時間の年間平均
- 給与支給総額および事業場内最低賃金に関する資料
- 役員名簿
- その他、事務局が指定する添付書類
ポイント
- 必要書類は**電子データ(PDF等)**で準備しておくとスムーズです。
- 決算書や賃金データは最新のものを使用してください。
- 書類不備や不足があると申請が受理されない場合があります。
3. 電子申請システムで交付申請
GビズIDプライムアカウントを取得し、販売事業者と共同で申請します。
4. 審査・採択・交付決定
中小機構の審査を経て採択が決定され、同時に交付決定が行われます。
5. 補助事業の実施と実績報告
交付決定日から原則12か月以内に事業を完了し、実績報告を提出します。
7. 採択の傾向とポイント
採択されやすい事業計画の傾向
- 効果が明確で即効性がある
- 導入製品による工数削減や人員配置削減が、数値や事例で具体的に示されている。
- 付加価値向上が見込める
- 単なる省人化にとどまらず、売上拡大、新サービス展開、品質向上などに波及する計画。
- 賃上げ計画が明確
- 補助事業期間中の賃上げ実施が具体的に示され、大幅賃上げ要件を満たす事例も多い。
- 実現可能性が高い
- 導入スケジュール、資金計画、体制整備が現実的で、期間内完了が見込める。
採択率を高めるためのポイント
- 数値根拠の明示
- 作業時間削減率や人件費削減額など、定量的データを盛り込む。
- 賃上げ計画の具体化
- 何%、いつから、どの職種に実施するかまで明記。
- 波及効果の記載
- 他部署への展開や顧客満足度向上など、省力化以外のプラス要素を記載。
- リスクと対策の明記
- 導入遅延や運用定着の課題に対して、代替策やフォロー体制を提示する。
採択率の傾向
本制度は令和5年度に開始された新しい事業であり、回ごとの採択率推移を示す十分なデータは現時点で存在しません。
ただし、事務局の説明や類似事業の傾向からは、以下の特徴が見られます。
- 比較的高い採択率
- 採択率はモノづくり補助金や事業再構築補助金よりも高めと推測されます。
- 採択条件を満たせば通りやすい
- カタログ製品の導入と賃上げ計画の明示が大きなカギ。
- 不備や要件未達は即不採択
- 書類不備や計画の数値根拠不足は致命的です。
8. 採択後の流れと義務
実績報告
補助事業終了後、交付決定日から原則12か月以内に事業を完了し、実績報告書を提出します。
報告内容は導入製品の稼働状況、経費支出の証拠書類、省力化効果の初期実績などです。
効果報告(3年間)
補助事業終了後、毎年度の指定期限までに3回、効果報告を提出します。
- 労働生産性
- 賃金(給与支給総額・事業場内最低賃金)
- 一人当たり勤務時間の平均
これらの実績を、事業計画の目標と照らして評価されます。
財産の管理と処分制限
補助事業で取得した資産(省力化製品)は、事業終了後も適切に管理し、処分制限期間を経過するまで譲渡や廃棄には制限があります。
義務違反時の措置
効果報告未提出や虚偽報告、財産管理不備などがある場合、補助金の返還や交付決定の取消が行われる可能性があります。
9. 注意点
本制度の申請や補助事業の実施にあたり、次の点に注意してください。
1. 製品はカタログ掲載品のみ
- カタログに掲載されていない製品は補助対象になりません。
- 同等品や仕様変更品も対象外となる場合があります。
2. 交付決定前の発注・契約は不可
- 交付決定前に発注・契約・支払いを行った経費は補助対象外です。
- リース契約の場合も、契約日や利用開始日に注意が必要です。
3. 効果報告義務(3年間)
- 補助事業終了後3年間、毎年度の期限までに効果報告を提出する必要があります。
- 未提出や内容不備は補助金返還の対象となることがあります。
4. 財産の処分制限
- 補助事業で取得した資産は、処分制限期間が終了するまで譲渡や廃棄が制限されます。
- 不要になった場合は事前に事務局の承認が必要です。
5. 賃上げ計画の未達成
- 計画期間中に賃上げを実施しなかった場合、ペナルティや返還の対象になることがあります。
10. よくある質問(FAQ)
Q1. 補助対象となる製品はどこで確認できますか?
A. 中小機構が公開している「省力化製品カタログ」に掲載された製品のみが対象です。最新カタログは事務局ホームページから確認できます。
Q2. カタログに載っていない製品を導入したい場合はどうなりますか?
A. カタログ未掲載品は補助対象外です。製造事業者または販売事業者がカタログ登録を行ってから申請してください。
Q3. 補助金の申請は誰が行うのですか?
A. 中小企業等と販売事業者(必要に応じて対象リース会社)が共同で行います。申請はすべて電子申請システムを通じて行います。
Q4. 他の補助金との併用は可能ですか?
A. 同一経費について、他の国や自治体の補助金との併用はできません。ただし、経費が明確に区分できる場合は併用可能なケースもあります。
Q5. 交付決定前に製品を発注しても大丈夫ですか?
A. 交付決定前に発注・契約・支払いを行った経費は補助対象外です。必ず交付決定後に契約してください。
Q6. リース契約は利用できますか?
A. 可能です。ただし、対象リース会社との契約に限られ、契約内容や期間が補助事業の要件に適合している必要があります。
Q7. 賃上げ計画は必須ですか?
A. はい。事業計画期間中に賃上げを行う意思を示し、事業終了後に実績を報告する必要があります。大幅賃上げを行う場合は補助上限額が引き上げられます。
Q8. 効果報告はどのように行いますか?
A. 補助事業終了後3年間、毎年度の指定期限までに労働生産性や賃金等の実績を報告します。未提出や内容不備は返還の対象になることがあります。
Q9. 申請にはどのような書類が必要ですか?
A. 事業計画書、過去2年分の損益計算書と1年分の貸借対照表、直近の賃金データや労働時間情報、役員名簿などが必要です(詳細は「申請の流れ」参照)。
Q10. 採択後に製品の変更はできますか?
A. 原則できません。やむを得ない場合は事務局の承認が必要で、変更内容によっては補助対象外になる場合があります。
11. まとめ
中小企業省力化投資補助事業(カタログ注文型)は、人手不足の解消や生産性向上を目的に、省力化製品カタログから選んだ製品導入を支援する補助金制度です。
- 補助対象は、中小企業者等で、カタログ掲載製品の導入と賃上げ計画が必須
- 補助率・上限額は従業員規模によって異なり、最大1,500万円まで(大幅賃上げ時)
- 申請は通年受付で、採択後は3年間の効果報告義務があります
- 採択されやすい計画は、省力化効果が数値で明確かつ実現可能性が高いもの
制度はシンプルですが、申請要件の不備や事後義務の未履行は補助金返還リスクにつながります。
申請を検討する場合は、早めに販売事業者や専門家に相談し、余裕をもって準備を進めることが成功のカギです。
事務所では、本制度の活用に向けた事業計画書作成支援や申請サポートを行っています。
初回相談は無料ですので、
- 制度の詳細を知りたい方
- 自社が申請対象になるか確認したい方
- 事業計画書や必要書類の準備に不安がある方
はお気軽にお問い合わせください。
販売事業者様からのご相談も歓迎します。
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