本ページは第2回公募要領に基づき作成しています。要領は改訂される場合があります。申請前に必ず事務局サイト掲載の最新版をご確認ください。
本記事では、各章の冒頭に「その章でわかること」を簡単にまとめています。まずは冒頭まとめをチェックして、自分に必要な内容を見極めたうえで、詳しく知りたい部分を本文でご確認いただくのがおすすめです。
1. 新事業進出補助金とは
新事業進出補助金は、中小企業が新しい市場や事業に挑戦するときに使える制度です。設備投資や販路開拓の費用をサポートしてくれるので、会社の成長や従業員の賃上げにつなげやすくなります。
概要
新事業進出補助金は、中小企業等が 既存事業とは異なる分野に挑戦し、新市場や高付加価値事業へ進出する取り組み を支援する制度です。
目的は、企業規模の拡大や付加価値向上を通じた 生産性向上と賃上げの実現 にあります。
この制度は、経済産業省・中小企業庁が所管し、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営します。
補助金を活用することで、新たな製品やサービスの開発、販路開拓、生産設備の導入など、新規事業展開に必要な投資の負担を軽減できます。
制度の背景
- 国内市場の成熟や人口減少により、中小企業は新たな収益源の確保が課題となっています。
- 補助金は、新事業分野への参入や高付加価値化を促進し、企業の持続的成長を後押しします。
- 賃上げや地域経済の活性化にもつなげることが目的です。
期待される効果
- 新製品・サービスの開発による 売上・利益の拡大
- 新市場参入による 顧客層の多様化
- 生産性向上による 競争力の強化
- 従業員の待遇改善と 人材確保の促進
本制度で想定する課題と解決アプローチ
本制度で想定する課題は、主に以下の4つです。
- 既存事業の成長限界:既存顧客層や市場が飽和し、売上拡大が困難。
- 設備・技術の陳腐化:老朽化や技術革新の遅れにより、競争力が低下。
- 新規市場への参入障壁:設備投資や人材確保に必要な資金が不足。
- 賃上げや人材確保の難しさ:利益余力がなく、待遇改善が進まない。
上記の課題に対して、本制度が採用する解決アプローチは、主に以下の4つです。
- 資金的支援:新規事業に必要な機械装置、システム構築、広告宣伝等への投資を補助。
- 高付加価値化の促進:製品やサービスの差別化、ブランド強化を支援。
- 賃上げインセンティブ:一定の賃上げを行った事業者には補助上限額を引き上げる特例を用意。
- 持続可能な経営計画の策定支援:会社全体の事業計画と連動させ、長期的成長を目指す。
両者の対応関係は、以下のように整理することができます。
課題 | 解決アプローチ |
---|---|
1. 既存事業の成長限界 | 1. 新市場進出への資金的支援 / 2. 高付加価値化の促進 |
2. 設備・技術の陳腐化 | 1. 設備投資への補助 / 2. 高付加価値化の促進 |
3. 新規市場への参入障壁 | 1. 広告宣伝や専門家活用の補助 |
4. 賃上げや人材確保の難しさ | 3. 賃上げインセンティブ / 4. 持続可能な経営計画の策定支援 |
主な用語の説明
- 新事業進出
既存の事業とは異なる市場や製品・サービス分野に挑戦することを指します。
💡 ポイントは「自社にとって新しい」ことが基準です。世の中で全く初めてである必要はありません。 - 製品等の新規性
その会社にとって新しい製品・サービスであること。たとえば、これまで飲食店だった企業が冷凍食品を製造・販売する場合は「新規性あり」となります。 - 市場の新規性
これまで対象にしていなかった顧客層やニーズに応えること。たとえば、法人向けサービスしか提供していなかった企業が、個人向けに事業を広げる場合などが該当します。 - 付加価値額
「営業利益 + 人件費 + 減価償却費」の合計額です。
この数値を伸ばすことが、本制度の大きな目的のひとつです。 - 賃上げ要件
事業計画の期間中に、給与支給総額または一人あたり給与支給総額を一定率以上増加させる必要があります。
💡 賞与(ボーナス)も給与総額に含まれる点に注意してください。
達成できなかった場合は補助金の一部返還義務が生じます。 - 事業場内最低賃金
その事業場で最も低い賃金のことです。地域別最低賃金より30円以上高い水準を維持する必要があります。 - 賃上げ特例
補助事業の期間中に以下を満たすと、補助上限額が引き上げられます。- 給与支給総額を6.0%以上増加させる
- 事業場内最低賃金を年額50円以上引き上げる
- 交付決定
「採択=すぐに発注OK」ではありません。採択後に「交付決定」の通知を受けてから、契約や発注を行う必要があります。これを誤ると対象外経費になってしまいます。
2. 補助対象となる事業者
この補助金を申請できるのは、国内に拠点を持つ中小企業や個人事業主などです。大企業やみなし大企業は対象外。自分の会社が条件に当てはまるか、まず確認しましょう。
本補助金の申請ができるのは、以下の条件を満たす 中小企業者等 です。
ここでいう「中小企業者等」には、会社、個人事業主、一定の組合等が含まれます。
対象者の要件
以下のいずれかに該当し、かつ日本国内に本社または主たる事業所を有する事業者。
- 会社(株式会社、合同会社、合名会社、合資会社)
- 個人事業主
- 中小企業等協同組合 等
- その他、中小企業基本法に規定する中小企業者
中小企業者の定義(資本金または従業員数の基準)
業種 | 資本金 | 従業員数 |
---|---|---|
製造業・建設業・運輸業 等 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
主な対象外事業者
以下に該当する場合は、本補助金の対象外です。
- 国税・地方税を滞納している者
- 直近の決算において債務超過で、経営再建の見込みが立たない者
- 創業1年未満の事業者(最低1期分の決算書の提出が必要)
- 応募申請時点で従業員数が0名の事業者
- みなし大企業に該当する事業者(資本構成・役員構成等による判定。例外規定あり)
- 大企業およびその子会社・関連会社
- 本制度/他制度に関する16か月以内の採択・実施重複に該当する事業者
- 過去に補助金等の不正受給や重大な違反を行った者
- 暴力団等反社会的勢力、またはその関係者
- 風俗営業等、法令で禁止・制限される事業を行う者
※その他、法令・公募要領に基づく対象外要件あり。詳細は公募要領本文の「補助対象外となる事業者」を必ずご確認ください。
3. 補助対象経費と補助額
この補助金では、新事業に必要な設備投資や広告宣伝などの費用がサポートされます。補助率は1/2以内で、従業員数に応じた上限額が決まっています。どんな経費が対象になるかを確認しましょう。
本補助金では、新事業進出に必要な設備投資や販路開拓等の経費について、一定割合が補助されます。
補助額や対象経費の範囲は以下のとおりです。
※本章の記載は概要です。補助対象経費の範囲・要件は公募要領「第6章」に準拠します。費目ごとの仕様書・積算根拠・見積書の要否等、詳細は要領・手引きをご確認ください。
補助額・補助率(従業員数別)
従業員数 | 補助上限額 | 補助上限額(賃上げ特例適用時) | 補助率 |
---|---|---|---|
20人以下 | 2,500万円 | 3,000万円 | 1/2以内 |
21〜50人 | 4,000万円 | 5,000万円 | 1/2以内 |
51〜100人 | 5,500万円 | 7,000万円 | 1/2以内 |
101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 | 1/2以内 |
* 賃上げ特例は、事業計画期間中に所定の賃上げ要件および事業場内最低賃金引上げ要件を満たす場合に適用されます。
* 補助下限額は、750万円です。
補助対象経費
補助対象となる経費と補助対象とならない経費
補助対象となる経費と補助対象外となる経費は、以下のように整理することができます。この表は「まず何が使えて、何が使えないか」をつかむための概要です。
※あくまで“概要”です。個別の可否や例外、証憑要件は費目ごとに細かく定められています。申請前に必ず最新の公募要領・手引きで最終確認してください。
補助の対象になり得る経費(主な費目) | 補助の対象外になる経費(例) |
---|---|
機械装置・システム構築費 新製品の製造や新サービスに必要な機械・装置・専用ソフトの購入・設置 | 既存設備の修理・更新、汎用PCやスマホなどの一般機器 |
建物費 新事業のための建物新築・改修(対象部分に限る) | 土地取得費、居住スペースや共用部分の工事、原状回復工事 |
技術導入費 新事業に活用する特許・ノウハウ等のライセンス料 | 維持・更新のみのライセンス料 |
広告宣伝・販売促進費 新事業の顧客獲得のための広告出稿、展示会出展など | 会社全体・既存事業のPR、名刺や通常パンフ等 |
外注費 試作、設計、デザインなど外部委託費 | 親会社・子会社・関連会社への委託 |
専門家経費 外部専門家への謝金・旅費(計画策定や技術指導) | 役員・従業員への謝金、社内教育費 |
運搬費 機械や資材の搬入・据付・輸送費 | 通常の販売配送・出荷費用 |
研修費 新設備や新技能の習得に必要な外部研修 | 自己啓発や新事業に直接関係しない研修 |
中古機器費 性能・耐用年数・価格妥当性が証明できる中古品 | 状態不明、耐用年数不足、妥当性が示せない中古品 |
リース料(共同申請) 対象リース会社との共同申請によるリース契約 | 単なるレンタル、要件を満たさないリース |
旅費 導入・調達・検収に必要な出張 | 視察旅行、接待を伴う出張 |
実務上の注意ポイント
表で示した「対象経費/対象外経費」の整理に加え、実際に申請・実施する際に注意すべき細かいポイントをまとめます。見落としがちな部分なので、必ずチェックしておきましょう。
- 設備投資・建物費
- 共用スペースや意匠性のみの工事は対象外。
- レイアウトや動線、用途が「新事業に直接必要」であることを説明できる資料を準備しておくと安心です。
- システム・ソフト・クラウド
- 判断基準は「新事業の提供に不可欠かどうか」。
- 汎用的な社内IT費用は対象外になりやすい。
- クラウド利用は、原則として補助事業期間内の利用分に限られます。
- 広告宣伝・販売促進
- 新事業に関わるものが対象。既存事業や会社全体のブランド広告はNG。
- ウェブサイト制作等は、仕様書や見積根拠の添付を求められる場合があります。
- 外注費・専門家経費
- 発注先は必ず第三者。親会社・子会社・関連会社は不可。
- 専門家の範囲や役務内容は「新事業との関係性」を明確に記載すること。
- 中古機器
- 原則NGですが、条件を満たせば認められる場合あり。
- 性能・耐用年数・価格妥当性を示すエビデンス(仕様書、写真、見積比較など)が必要です。
- リース
- リース会社との共同申請や補助額の減額条件など、制度特有のルールがあります。
- 通常のレンタルは対象外になりやすいので要注意です。
- 共通の注意点
- 発注・契約・支払・検収は 交付決定後 に行う必要があります。
- 補助金は 後払い(精算払い) のため、キャッシュフローを事前に考慮しておきましょう。
4. 公募スケジュール
新事業進出補助金は令和7年度に始まり、第2回の募集が現在実施中です(9/12〜12/19 18時締切)。申請から採択、交付申請、事業実施までの流れは決まっていますが、公募の詳細は回ごとに異なるため、必ず最新の要領を確認しましょう。
新事業進出補助金は、令和7年度に初めて公募が開始された制度です。
第1回の募集はすでに終了しており、第2回の公募が発表されました。補助金事業の性質上、年度単位での公募継続が想定されます。
第2回 公募期間:
2025年9月12日(金)〜12月19日(金)18:00(厳守)
※電子申請のみ/GビズIDプライム必須
大まかなスケジュール感
これまでの公募内容や補助金制度の一般的な流れから、以下のようなスケジュール感が想定されます。ただし実際のスケジュールは回ごとに異なるため、必ず最新の公募要領をご確認ください。
- 公募開始:事務局サイトで要領公開とともにスタート
- 申請受付:約1〜2か月間、原則電子申請
- 審査・採択発表:締切から1〜2か月後に公表
- 交付申請・事業開始:採択発表から原則2か月以内
- 事業実施期間:交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内)
- 実績報告・補助金請求:事業完了後に報告書提出・検査を経て支払い
今後の実施見込み
今後も年度単位での公募が継続する見込みですが、回数や時期は年度予算や政策方針によって変動します。必ず公式の最新情報を定期的にチェックしてください。
5. 申請要件(簡易チェックリスト)
新事業進出補助金の申請には、必須要件をすべて満たす必要があります。本章のチェックリストで、自社が応募できるか、また有利になる条件があるかを簡単に確認できます。
本章のチェックリストを使えば、自社が新事業進出補助金に申請できそうかどうかを簡単に確認できます。
ただし、ここで紹介する内容はあくまで概要です。細かい条件や例外規定については、必ず最新の公募要領や関連資料を確認してください。
対象者
☑中小企業基本法に規定する中小企業者(会社・個人事業主・中小企業等協同組合 等)
☑日本国内に本社または主たる事業所を有する
☑大企業・みなし大企業・反社会的勢力等に該当しない
(※定義や対象外条件の詳細は第2章を参照)
必須要件(すべて満たさないと採択不可)
☑新事業進出要件:「新事業進出指針」に沿った新規市場・新製品への進出
☑付加価値額要件:事業終了後3〜5年間で付加価値額が年平均4%以上増加する見込み
☑賃上げ要件:以下いずれかを満たす
- 一人当たり給与支給総額の年平均成長率が、直近5年の都道府県最低賃金の平均成長率以上
- 給与支給総額の年平均成長率が2.5%以上
(※未達の場合は補助金の一部返還あり)
☑事業場内最低賃金要件:地域別最低賃金+30円以上を維持
☑経費・手続き要件:以下のすべてを満たす
- 補助対象経費は第3章の範囲に限定
- GビズIDプライムを取得済み(電子申請に必須)
- 該当する場合は必要な許認可を取得済み
- 同じ公募回では1事業者につき1件のみ申請可能
- 直近1期分以上の決算書(確定申告書類)を提出できる
加点要件(該当すると審査でプラス評価)
☑賃上げ特例を満たす計画を提出
☑DX認定事業者
☑先端設備等導入計画の認定を受けている
☑経営革新計画の承認を受けている
☑被災地域で事業を実施する
☑(該当する場合のみ)地域未来牽引企業、J-Startupなどに認定されている
特例要件(該当すると補助内容の特典あり)
☑賃上げ特例:給与総額を6%以上増加+事業場内最低賃金を年額50円以上引上げ → 補助上限+500万円
☑災害復興特例(該当地域のみ):復興計画に基づく事業 → 補助率や上限額の特例が適用
6. 事業計画書作成のポイント
事業計画書は採択の決め手となる資料です。新規性・波及効果/実現可能性/収益性・持続性の3観点から、根拠を示しつつ説得力ある説明を行うことが重要です。
第5章で整理した必須要件や加点要件は、申請資格や有利になる条件を確認するための入口にすぎません。
実際の審査では「その要件をどのように事業計画書で裏付け、説得力を持たせているか」が評価の中心となります。
この章では、審査員に納得してもらえる計画書を作るために押さえるべきポイントを整理します。
新規性の説明、付加価値額や賃上げ要件の根拠、波及効果や実現可能性のアピールなど、本制度ならではの重点項目を具体的に解説していきます。
補助金申請に必要な事業計画書の書き方の基本が知りたい方は、こちらもご覧ください↓
審査の観点
新事業進出補助金の審査は、事業の適格性・優位性・実現可能性・継続可能性 の観点で行われます(公募要領より)。
本記事では、読みやすさのために、これらを以下の3つに整理して解説します。
- 新規性・波及効果(=適格性・優位性に対応)
- 実現可能性
- 収益性・持続性(=継続可能性に対応)
事業計画書では、これらの観点を押さえて説得力ある説明をすることが、採択につながる大きなポイントです。
書き方のポイント
1. 新規性・波及効果の押さえ方
- 新規性を説明する
- 既存事業との違いを、市場面と製品・サービス面の両面から整理
- 「新事業進出指針」に沿った根拠を明記
- 市場調査や業界動向データを引用して説得力を高める
- 波及効果や地域貢献を示す
- 地域雇用の創出、地元企業との連携、新技術の普及効果などを具体的にアピール
2. 実現可能性の押さえ方
- 実施体制(担当部署、責任者、外部支援者)を明確化
- 「交付決定日から14か月以内/採択発表日から16か月以内」に収まるスケジュールを提示
- 自己資金や融資見込み額を明記し、資金計画の確実性を示す
- 必要な許認可は既に取得済みであること/取得予定時期を明記
3. 収益性・持続性の押さえ方
- 付加価値額4%増加を裏付ける
- 計画期間(3〜5年)の付加価値額試算表を提示
- 設備導入による生産性向上、新市場売上の創出など、増加要因を具体的に記載
- 賃上げ要件・最低賃金要件を示す
- 賃上げ率や最低賃金引上げ額を明確な数値で提示
- 実施方法(昇給時期、給与体系の改定方法など)を記載
- 賃上げ特例を狙う場合は、給与支給総額6%以上増加や最低賃金50円以上引上げの実現方法を詳細に説明
4. 加点要件を意識する
上記の3つの基本要件を押さえたうえで、加点要件を満たせるなら積極的に利用しましょう。
- DX認定、先端設備等導入計画、経営革新計画などの取得予定を明記
- 被災地域での実施や地域未来牽引企業等のステータスがあれば積極的に記載
事業計画書チェックリスト(簡易診断用)
新事業進出補助金申請用の事業計画書の妥当性を簡易に診断するためのチェックリストです。ぜひご活用ください。
☑新事業進出要件を満たしている(市場・製品の両面で新規性あり)
☑地域経済や雇用への波及効果を具体的に示している
☑実施体制・資金計画が現実的である
☑設備・販路開拓・人材計画が補助事業期間内に完了可能である
☑付加価値額が年平均4%以上増加する根拠がある
☑事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上(特例狙いなら+50円)
☑賃上げ要件を満たす数値と実施方法が明確である
☑必要な許認可を申請前に取得済み
☑補助対象経費だけで構成され、対象外経費を含まない
☑加点要件(DX認定、先端設備等導入計画、地域未来牽引企業等)に該当する
7. 申請の流れ
申請は電子申請(jGrants)のみで行います。特にGビズID取得などの事前準備に時間がかかるため、早めの対応が必須です。各ステップの期限を守り、余裕をもって進めましょう。
申請から補助金受給までの流れは、大きく次の7ステップに分かれます。
- 事前準備(ID・許認可・見積書の準備)
- 申請書類の作成
- 電子申請(jGrantsでの提出)
- 審査・採択結果の公表
- 交付申請・交付決定
- 事業実施
- 実績報告・補助金請求
以下でそれぞれを詳しく解説します。
Step 1:事前準備
- GビズIDプライムの取得
電子申請に必須。取得に2〜3週間かかるため、早めに準備しましょう。 - 必要な許認可の取得
事業に必要な営業許可・資格は申請時点で取得済みであることが条件です。判断が難しい場合は専門家に相談すると安心です。 - 見積書・仕様書の準備(推奨)
申請時は必須ではありませんが、交付申請時には原則50万円以上で3者見積が必要です。早めに取得を進めておくとスムーズです。
※一部の費目(広告宣伝・販売促進費など)は申請時から見積や根拠資料が求められる場合があります。
Step 2. 申請書類の作成
申請時には以下の書類をPDF等で提出します。
必須提出書類(全申請者共通)
☑ 事業計画書(様式1号など)
☑ 経費明細書
☑ 直近2期分の決算書(法人)または確定申告書(個人)
☑ 法人登記簿謄本または履歴事項全部証明書(会社概要)
☑ 反社会的勢力でないことの誓約書
☑ GビズIDプライムによる電子署名(jGrantsで自動付与)
該当する場合のみ提出
☑ 許認可証の写し(事業に必要な場合)
☑ 加点要件に関する証明書(DX認定通知書等)
☑ 被災証明書(災害復興特例を利用する場合)
☑ 費目ごとの根拠資料(広告宣伝・販売促進費など)
☑ 事務局が求める追加書類
Step 3. 電子申請
- 指定の電子申請システム(実務的には jGrants)から申請します。
- 書類を添付し送信後、マイページで「申請完了」になっているか必ず確認。
- 締切は18時ですが、システム混雑を避けるため数日前の提出が推奨されます。
Step 4. 審査・採択結果の公表
- 書類審査(必要に応じて追加資料提出あり)
- 審査観点は「新規性・波及効果」「実現可能性」「収益性・持続性」など。
- 採択結果は事務局ホームページおよびjGrantsで発表されます。
Step 5. 交付申請・交付決定
- 採択発表後、原則2か月以内に交付申請を行います。
- 補助対象経費ごとの見積書や価格妥当性の証憑を提出。
- 交付決定通知を受けてから事業を開始できます(それ以前の契約・発注は原則不可)。
Step 6. 事業実施
- 期間:交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内)
- 支払:原則銀行振込で確認。現金・カード払いなどの可否は最新版の手引きを確認。
- 発注先:原則として第三者(親会社・子会社・関係会社は不可)。
Step 7. 実績報告・補助金請求
- 事業完了後、実績報告書と経費証憑を提出。
- 事務局の確定検査を経て、補助金が精算払で振込。
8. 採択の傾向とポイント
本制度は採択実績が未公表のため傾向は不明ですが、他補助金の例からは「新規性・市場性・実現可能性」が重要です。採択率は事業再構築補助金(約40〜50%)を目安とするとよいでしょう。
現時点での留意点
新事業進出補助金は、令和7年度に初めて実施された新制度です。
初回公募の採択結果はまだ公表されていないため、現時点では本制度固有の採択傾向や採択率データは存在しません。
以下の内容は、公募要領に示された審査基準および他の類似補助金の実績を参考に整理したものです。
今後、採択結果が公表された際には、本章の内容を最新の実績に基づいて更新予定です。
採択率の傾向(参考)
本制度の採択率は未公表ですが、制度設計や要件の多くは、令和2年度から実施されてきた事業再構築補助金の後継的な性格を持っています。
暫定的には、事業再構築補助金や他の主要補助金の採択率を参考ベンチマークと考えることができます。
制度名 | 採択率(R4年度実績) |
---|---|
事業再構築補助金 | 約40〜50% |
ものづくり補助金 | 約45〜55% |
小規模事業者持続化補助金 | 約50〜60% |
※ 制度の目的・予算規模・応募数によって変動します。本補助金の採択率はこれらと異なる可能性があります。
採択されやすい事業の特徴(類似補助金の傾向から)
- 新規性・独自性が明確
既存事業との違いがはっきりし、競合との差別化ができる。 - 市場性・成長性が高い
市場規模や需要増加の根拠をデータで示せる。 - 実現可能性が高い
実施体制・資金計画・スケジュールが現実的で、事業期間内に完了できる。 - 付加価値額・賃上げ要件を数値根拠付きでクリア
単なる目標ではなく、具体的な算定根拠を提示している。 - 地域経済や社会的課題への貢献が明確
雇用創出、地域連携、環境配慮などの波及効果がある。 - 加点要件を複数満たしている
DX認定、先端設備等導入計画、経営革新計画など。
なお、「採択率を上げるための工夫」は第6章で詳しく解説しています。
9. 採択後の流れと義務
採択後は交付申請から事業実施、実績報告まで手続きが続きます。賃上げや付加価値額の達成も義務で、未達や無断変更は返還リスクあり。採択後も計画的な管理が欠かせません。
新事業進出補助金は、採択された後も「交付申請 → 事業実施 → 実績報告 → 要件達成確認」までを含めて完了となります。
採択後に義務や条件を守らない場合、補助金の減額や返還が発生することがあります。
採択後の主な流れ
- 交付申請
採択発表後、原則2か月以内に交付申請を行います。
この際、補助対象経費ごとの見積書や価格妥当性証憑を提出します。資金計画の裏付けも確認されるため、自己資金や融資見込みを整理しておくことが重要です。 - 交付決定・事業開始
交付決定通知を受けてから事業を開始します(それ以前の契約・発注は原則不可)。 - 事業実施
交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月以内)に、発注・納品・支払・検収を完了します。
事業内容や経費の変更が生じる場合は事前に変更申請が必要です。無断変更は経費不認定や返還の対象になります。 - 実績報告
事業完了後、成果物・経費証憑・写真・支払記録などを添えて実績報告書を提出します。 - 確定検査・補助金請求
事務局の確認・検査を経て、補助金が精算払で支払われます。
採択後に守るべき義務
- 賃上げ要件の達成
事業計画期間(3〜5年)において、設定した賃上げ目標を達成すること。未達の場合は一部返還義務があります。 - 事業場内最低賃金の維持
地域別最低賃金+30円(特例の場合+50円)を維持すること。 - 付加価値額要件の達成
計画通りに付加価値額(または従業員1人当たり付加価値額)を増加させること。未達の場合は返還の可能性があります。 - 経費の適正使用
補助対象外経費の支出や目的外使用は不可。 - 帳簿・証憑の保存
補助事業に関する書類は原則5年間保存。 - 事務局への報告義務
年次報告や計画達成状況の報告が求められる場合があります。
注意点
⚠ 採択=補助金確定ではありません。必ず交付決定を受けてから事業を開始してください。
⚠ 事業内容や経費配分の変更は必ず事前承認が必要です。無断変更は経費不認定や返還の対象になります。
⚠ 賃上げ・最低賃金要件の達成は採択後数年間にわたって追跡されます。
10. 注意点
申請や事業実施では、対象外経費の計上や交付決定前の発注などをすると補助金が受けられなくなります。要件未達は返還リスクも。スケジュール管理や証拠資料の準備を徹底し、制度特有のルールを必ず守りましょう。
申請や事業実施にあたっては、以下の点に十分注意してください。違反や不備があると、不採択や補助金返還につながる場合があります。詳細は関連章(第3章・第7章・第9章)もあわせてご確認ください。
✅ 経費の適正性
- 補助対象外の経費(汎用性の高い備品、交際費、税金、日常的な運転資金など)は計上できません(→第3章参照)。
- 契約・発注・支払いは必ず交付決定日以降に行ってください(例外は事務局承認がある場合のみ)。
✅ 見積・証拠資料
- 採択後の交付申請時には、50万円(税抜)以上は原則2者以上から相見積を取得し、価格妥当性を説明できるようにします。
- 一部の費目(例:システム構築費、広告宣伝・販売促進費)は仕様書や積算根拠付き見積の提出が必要です。
✅ 計画の実現性
- 事業計画が過大だと「実現可能性が低い」と判断されます。
- 自社の人員・資金・スケジュールで確実に実行できる計画を立てましょう。
- 納期・施工期間は事前に確認し、交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月以内)に完了可能な計画としてください(→第7章参照)。
✅ 申請書の記載内容
- 他事業や過去申請の流用は、整合性欠如や誤記につながります。
- 数値目標や効果は根拠付きで記載し、審査項目を網羅してください(→第6章参照)。
- 新事業進出要件や賃上げ要件など、制度固有の必須要件は必ず反映します(→第5章参照)。
✅ 特例・加点要件
- 賃上げ特例や加点要件(DX認定、先端設備等導入計画など)を記載する場合は、証拠資料が必須です。
- 賃上げ・最低賃金引上げ・付加価値額要件の未達は、補助金返還や減額の対象になります。
✅ スケジュール管理
- 採択=補助金確定ではなく、交付決定後に事業開始となります。
- 交付申請は採択後2か月以内、事業は交付決定から14か月以内に完了が必要です(→第9章参照)。
- 計画段階で余裕のあるスケジュールを組みましょう。
✅ 補助事業終了後の義務
- 計画期間中(3〜5年)、賃上げ要件・最低賃金要件・付加価値額要件を継続達成する必要があります。
- 効果報告が毎年度求められ、未達の場合は他補助金申請時の減点や返還リスクがあります。
- 補助事業で取得した設備等は、法定耐用年数まで処分制限があり、譲渡・廃棄・転用には事前承認が必要です(→第9章参照)。
✅ その他の注意点
- 本補助金は電子申請のみ。GビズIDプライムアカウントが必須です。
- 他補助金との重複受給は禁止。同一内容での複数申請や、同一法人での同時申請はできません。
- 申請締切日を起点に16か月以内に特定の他補助金の採択・実施が重複する場合、対象外となる規定があります。要領の該当条項を必ず確認してください。
- 中小企業庁や事務局による現地調査が行われる場合があります。設備や証憑が確認できないと経費不認定となります。
11. よくある質問(FAQ)
ここでは、申請を検討中の方からよく寄せられる質問をまとめています。
「補助金全般に共通する質問」と「新事業進出補助金ならではの質問」に分けて整理しました。
基礎的な質問(制度横断的な内容)
※ 詳しくは総合ガイドもあわせてご覧ください。
Q1. 補助金はいつ支払われますか?
A. 補助事業が完了し、実績報告が承認された後に精算払いで支払われます。前払いはありません。
Q2. 交付決定前に発注・契約・支払いをしてもいいですか?
A. 不可です。交付決定前の契約・支払いは補助対象外になります。
Q3. 支払い方法に制限はありますか?
A. 原則は銀行振込。現金・クレジット等の可否は交付規程・手引きに従います。
Q4. 他の補助金と併用できますか?
A. 同一経費の重複受給は不可。複数制度を併用する場合は経費区分を明確にする必要があります。
Q5. 1つの公募で複数申請できますか?
A. 不可です。同一法人・事業者につき1件のみ申請できます。
制度固有の質問
Q6. 応募申請時に見積書は必要ですか?
A. 原則不要です。ただし、費目によっては例外があります。たとえば広告宣伝・販売促進費の一部では、仕様書や積算根拠付き見積を申請時から求められるケースがあります。いずれにせよ、採択後の交付申請時には見積書が必須で、50万円以上の経費は原則2者以上の相見積が必要です。準備は早めに進めることをおすすめします。
Q7. どんな経費が対象/対象外ですか?
A. 補助対象は「新事業進出の実施に直接必要な経費」に限られます。例えば、機械装置費やシステム構築費、外注費、広告宣伝・販売促進費などです。一方、汎用パソコンや既存事業の通常経費、交際費、日常運転資金などは対象外です。
👉 詳しいリストは「第3章:対象経費」で表形式にまとめていますので、必ず併せてご確認ください。
Q8. リースで導入できますか?
A. 条件付きで可能です。リース会社と共同申請を行い、リース料から補助金相当分を差し引く形で契約する必要があります。通常のレンタル契約は対象外となることが多いため注意してください。制度独自のルールがあるので、公募要領のリースに関する規定を必ず確認してください。
Q9. 付加価値額4%以上増加の根拠はどう示せばよいですか?
A. 事業計画期間(3〜5年)の試算表を作成し、「売上増加」「生産性向上」「新市場売上の創出」など具体的な増加要因を数字で示す必要があります。営業利益+人件費+減価償却費の合計値を基準に、なぜ4%以上増加するのかを説得力ある形で説明しましょう。
Q10. 賃上げ要件を満たさなかった場合どうなりますか?
A. 事業計画期間中に賃上げ目標を達成できなかった場合、補助金の一部返還を求められる可能性があります。さらに、他の補助金申請時に不利になる(減点される)ケースもあります。「目標達成が現実的か」を審査時点で重視されるため、無理のない計画を立てることが重要です。
Q11. DX認定や経営革新計画などの加点要件は申請時に必要ですか?
A. 基本的には「申請時点で認定を取得済み」である必要があります。ただし、一部の認定(例:先端設備等導入計画)は「取得見込み」を記載するだけでも評価対象になる場合があります。確実に加点を狙うなら、申請前に取得済みにしておくのが安心です。
Q12. 補助事業期間はどのくらいですか?
A. 交付決定日から原則14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内)が上限です。年度をまたぐケースもあり得ます。スケジュールがタイトなので、発注から納品・支払・検収まで完了できるかを事前に確認することが必須です。
Q13. 実績報告ではどんな資料が必要ですか?
A. 成果物の写真、納品書・請求書・領収書、振込記録、契約書など、経費の支出と事業実施を裏付ける証憑一式が必要です。様式の不備や証憑不足は補助金不支給につながるため、日々の記録管理を徹底することが成功のカギです。
12. まとめ
新事業進出補助金は、中小企業や小規模事業者が新たな市場や事業分野へ挑戦するための支援制度です。始まったばかりの制度であり不明点も多いですが、事業再構築補助金の流れを引き継ぐ制度と位置付けられ、新規性・市場性・実現可能性・地域貢献性が重視されると考えられます。競争は厳しく、チャンスも限られることが見込まれるため、今できる準備を早めに整えておくことが重要です。
具体的な準備の例
- 加点要件に関する認定・証明書類の事前整備
- GビズIDプライムの早期取得
- 事業計画書の練り込み(数値根拠や新規性の明確化)
サポートのご案内
当事務所では、本制度の活用を検討する事業者さま向けに、事業計画書作成支援や申請サポート を行っています。
こんな方におすすめです:
- 制度の詳細を知りたい
- 自社が申請対象になるか確認したい
- 事業計画書や必要書類の準備に不安がある
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本記事の執筆者
朝倉とやまコンサルティング事務所の代表・朝倉傑が本記事を執筆しました。
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