警告書が届いたらどうする?知財実務家が解説する正しい初動対応と判断ポイント

知的財産権の警告書が突然届いたとき、多くの方が動揺し、「明日から商売ができなくなるのでは?」と不安になるかもしれません。しかし、まずは落ち着いてください。警告書は適切に対応すれば、必ず解決の糸口が見つかります。

この記事では、警告書を受け取った際の正しい初動対応と判断のポイントを解説します。


目次

警告書とは何か?法的な位置付けを正しく理解する

警告書は裁判所の命令ではない

警告書は、権利者やその代理人が私的に送付する文書であり、裁判所が発する命令や決定ではありません。法的な強制力はなく、受け取ったからといって直ちに法的義務が発生するわけではないのです。

この点を理解しておくことは、冷静な判断を保つうえで重要です。警告書には「○日以内に回答せよ」「直ちに使用を中止せよ」といった強い表現が使われることがありますが、これらは権利者側の要求であって、法的な拘束力を持つものではありません。

それでも軽視してはいけない理由

とはいえ、警告書を軽視することは危険です。警告書は訴訟提起の前段階として送られることが多く、適切に対応しなければ、次のステップとして訴訟に発展する可能性があります。訴訟になれば、弁護士費用や時間的コストが大幅に増大します。

また、警告書を受け取った後も実施行為を継続した場合、「警告を受けたのに実施を続けた」という事実が、故意侵害の判断要素の一つとして考慮される可能性があります。特許法や商標法では、故意侵害に対して刑事罰の規定があるため、警告書を無視して実施を継続することは大きなリスクを伴います。

特にBtoB企業の場合、自社だけでなく納入先(顧客)にも警告書が送られてしまうケースがあります。顧客から「お宅の製品、知財侵害で訴えられているそうですが大丈夫ですか?」と問い合わせを受けることが、事業上最も大きなダメージになることも少なくありません。

警告書を送る側の主な目的

権利者が警告書を送る目的は主に三つあります。これらが組み合わさっていることもあります。

一つ目は、侵害行為の停止です。権利者は自身の知的財産権が侵害されていると考え、その行為をやめてほしいと考えています。

二つ目は、ライセンス料(権利の使用料)や損害賠償(過去の侵害行為に対する金銭的な補償)の請求です。ライセンス契約の締結を求められることもあります。

三つ目は、訴訟前の証拠固めや交渉材料の確保です。警告書への回答内容は、後の訴訟において証拠として使われることがあります。権利者側は、警告書のやり取りを通じて相手方の主張や立場を把握し、訴訟戦略を立てることもあるのです。


警告書が届いたら、まずやるべき最低限の対応

回答期限を必ず確認する(ただし法的義務ではない)

警告書には通常、「本書面到達後○日以内に回答されたい」といった期限が記載されています。ただし、この期限はあくまで相手方の希望であり、法的な義務ではありません。

期限が極端に短い場合(例えば到達後3日以内など)、物理的に十分な検討ができないこともあります。実務上よく見られる対応としては、まず「受領確認と検討に時間が必要な旨」を数日中に連絡し、本回答まで2〜4週間程度の猶予を作る方法があります。

具体的には、「貴信を確認いたしました。内容を慎重に検討する必要があるため、○月○日までお時間をいただけますでしょうか」といった簡潔な連絡をすることで、誠実に対応する姿勢を示しつつ、十分な検討時間を確保できます。

このような連絡では、内容には踏み込まず、「受領したこと」と「検討中であること」だけを伝える対応で、専門家に相談するまでの安全なワンクッションとして実務でよく用いられます。

期限を過ぎたからといって直ちに法的な不利益が生じるわけではありませんが、権利者側に「誠実に対応する意思がない」という印象を与え、訴訟に進む可能性を高めてしまいます。

対象となっている知財権の番号と有効性を確認する

警告書には、侵害されていると主張する知的財産権の情報が記載されています。特許であれば特許番号、商標であれば登録番号といった情報です。

まず、この権利が実際に存在し、有効に登録されているかを確認しましょう。特許庁のデータベース(J-PlatPat)を使えば、誰でも無料で特許・商標・意匠の登録状況を簡易的に確認できます。

ただし、法的に正式な権利状態を示すのは特許原簿・商標原簿・意匠原簿(ファイルラッパー)であり、J-PlatPatの情報と原簿の情報に齟齬がある場合は原簿が優先されます。重要な判断をする際は、特許庁で原簿を取得して確認することをお勧めします。

確認すべきポイント

権利種別主な確認事項注意点
特許・登録の有無
・存続期間(原則、出願から20年)
・年金納付状況
・無効審判・訂正審判の進行状況
経過情報で審判が係属中でないか確認
商標・登録の有無
・更新登録の状況(10年ごと)
・指定商品・役務の範囲
・不使用取消審判の有無
使用している商品・サービスが指定範囲内か
意匠・登録の有無
・存続期間(出願から25年だが、出願日によって異なる)
・年金納付状況
部分意匠や関連意匠にも注意
著作権・創作の事実
・依拠性(真似したかどうか)
・著作者の特定
登録は必須ではない(無方式主義)。「番号がない=無効」ではない点に注意

特に著作権の場合、特許や商標と異なり登録番号が必須ではありません。そのため、権利の有効性の判断は「創作の事実」や「依拠性(真似したかどうか)」が主な争点となります。

また、J-PlatPatの経過情報を確認し、無効審判や訂正審判が進行中でないかもチェックしましょう。権利が係争中である場合、対応方針に影響を与えることがあります。

まれに、既に消滅している権利や、そもそも存在しない権利番号を記載した警告書が送られてくることもあります。

権利者と送付元(代理人)の関係を確認する

警告書が弁護士や弁理士といった代理人から送られてきた場合、その代理人が本当に権利者から正当な委任を受けているかを確認することも重要です。

通常、代理人が送る警告書には「権利者○○の代理人として」といった記載があります。また、委任状が添付されている場合もあります。

疑わしい場合は、特許原簿や商標原簿で権利者の連絡先を確認し、直接権利者に確認することも検討できます。ただし、不用意に連絡すると、こちらの事情を先に開示してしまい交渉上不利になることもあります。この対応は慎重に行う必要があり、専門家に相談してから行うことをお勧めします。

メールやDMで届いた警告書も無視してはいけない

最近は内容証明郵便だけでなく、メールやSNSのDM、ウェブサイトの問い合わせフォームから警告書が届くケースも増えています。

「メールだから正式な警告ではない」と考えるのは危険です。メールは内容証明郵便のような送達の証明力とは別問題ですが、内容次第では後の紛争で重要な証拠として扱われ得ます。放置が安全とは限りません。

むしろ、気軽に送れるがゆえに、警告書のハードルが下がっている側面もあります。形式にかかわらず、知的財産権の侵害を主張する内容であれば、真摯に対応する必要があります。


社内でやっておくとよい対応(専門家への相談と並行して)

関連資料・証拠を消さずに整理する

警告書が届いたら、対象となっている製品やサービス、表現に関する資料を整理しておきましょう。具体的には以下のようなものです。

  • 製品の設計図面、仕様書、カタログ
  • 開発の経緯を示す社内資料や議事録
  • 先行技術調査の結果や参考にした資料
  • 販売開始時期や販売数量を示す記録
  • ウェブサイトやSNSでの宣伝文句のスクリーンショット
  • 著作物の場合、創作過程を示す下書きやデータのタイムスタンプ

これらの資料は、侵害の有無を判断したり、反論の材料を探したりする際に必要となります。特に、独自に開発した経緯を示す資料は、故意侵害ではないことを示す重要な証拠になり得ます。

注意すべきは、証拠を改ざんしたり、不利な証拠を破棄したりしてはいけないということです。これは訴訟になった場合に重大な不利益をもたらします。不利な証拠であっても、隠さず整理しておくことが適切な対応策を立てる第一歩です。

対象行為・製品・表現内容を正確に特定する

警告書で指摘されている侵害行為が具体的に何を指しているのかを正確に把握しましょう。

特許侵害の場合、警告書には侵害していると主張される製品や方法が記載されています。自社のどの製品のどの部分が問題とされているのかを明確にします。

商標侵害の場合、使用している商標やロゴ、商品名、サービス名のうち、どれが問題視されているのかを特定します。また、どの商品・サービスについての使用が問題とされているかも重要です。

著作権侵害の場合、どのコンテンツ、画像、文章、デザインが対象となっているかを確認します。

対象を正確に特定することで、専門家への相談がスムーズになり、対応方針の検討も的確に行えます。

社内での共有範囲を限定する

警告書の内容は、必要最小限の関係者のみと共有するようにしましょう。知る必要がある人は、経営層、法務担当者、該当する製品・サービスの責任者などに限られます。

情報が社内で広く拡散すると、不正確な情報や憶測が広がり、社内の混乱を招くことがあります。また、情報が外部に漏れるリスクも高まります。

警告書への対応は、訴訟に発展する可能性がある重要な案件です。情報管理を適切に行うことは、その後の対応を円滑に進めるために不可欠です。


警告書を無視してよいケースは限定的

実務上は「完全に何もしない」という意味での無視よりも、事実関係のみを簡潔に指摘したうえで、それ以上対応しない、という形を取ることも少なくありません。以下、対応の必要性が低いと考えられるケースを解説します。

権利者や正当な代理人でない者からの警告書

警告書が、権利者でも正当な代理人でもない第三者から送られてきた場合、対応の必要性は低いと言えます。

例えば、以下のようなケースです。

  • 権利者ではない者が勝手に警告書を送ってきた
  • 代理人を名乗っているが、委任関係が確認できない
  • 明らかに詐欺や恐喝を目的とした内容

ただし、これらの判断は慎重に行う必要があります。一見疑わしく見えても、実際には正当な警告書である可能性もあります。自己判断で無視する前に、専門家に相談することをお勧めします。

知財権が明らかに消滅している場合

警告書で主張されている権利が、既に存続期間の満了や年金不納付により消滅している場合、現在および将来の実施について差止請求を受けることはありません。つまり、事業の停止を求められる心配はないということです。

ただし、権利が存続していた期間の実施行為については、損害賠償請求等の対象となる可能性があります。権利が消滅したからといって、過去の侵害による金銭的な請求まで免れるわけではない点に注意が必要です。

「消滅している」という判断は、厳密には、特許原簿・商標原簿・意匠原簿で確実に確認できた場合に限ります。J-PlatPatは簡易確認には便利ですが、法的に正式な権利状態を示すのは原簿です。

消滅の事実が客観的に確認できれば、侵害不成立を理由に対応を最小限にとどめるという判断もあり得ます。ただし、完全に沈黙するよりも、簡潔な回答書で「貴社主張の権利は○年○月○日に消滅しており、侵害は成立しません」といった事実関係のみを指摘する対応の方が、後々のトラブルを防ぐうえで望ましいでしょう。

自己判断で無視することのリスク

「自社の製品は侵害していない」「この警告書はおかしい」と自己判断で無視することには大きなリスクがあります。

知的財産権の侵害判断は専門的で複雑です。特許の場合、特許請求の範囲の解釈、均等論の適用、間接侵害の成否など、法律的な専門知識が必要です。商標の場合も、類似性の判断や指定商品・役務の範囲など、専門的な検討が求められます。

自己判断で無視した結果、訴訟を提起され、実際には侵害が認められてしまうケースは少なくありません。その場合、警告段階で適切に対応していれば避けられたはずの時間的・経済的損失が発生します。


警告書対応でやってはいけないこと

感情的な返答や電話でのやり取り

警告書を受け取ると、不当な要求だと感じて感情的になることがあります。しかし、感情的な返答は事態を悪化させるだけです。

特に避けるべきは以下のような対応です。

  • 相手を非難したり、攻撃的な表現を使ったりする
  • 電話で直接交渉しようとする
  • 即座に反論の内容を返信してしまう

警告書への対応は、すべて書面で記録に残る形で行うべきです。電話でのやり取りは、言った言わないの争いになりやすく、また不用意な発言が後で不利な証拠として使われる可能性があります。

返答する場合は、冷静に、事実に基づいて、専門家の助言を受けながら、書面で行うのが原則です。

謝罪や侵害を認める表現をしてしまうこと

警告書に対して、軽い気持ちで「申し訳ございません」「ご指摘の通りです」「確認が不十分でした」といった謝罪や同意の言葉を使ってしまうことは危険です。

これらの表現は、侵害の事実そのものを認めたと解釈される可能性があります。一度「侵害している」という事実を認めてしまうと、後から「実は侵害していなかった」と主張を覆すことは極めて難しくなります。

特に注意すべきは、「貴社の権利を侵害しておりました」「権利範囲に含まれることを認識しました」といった、侵害の成否について明確に認める表現です。これらは訴訟において決定的な不利益をもたらします。

返答が必要な場合でも、侵害の有無については、慎重に検討してから明確な立場を示すべきです。不用意な表現は避け、専門家のチェックを受けることが重要です。もし誠意を示したい場合でも、「貴信を真摯に受け止め、慎重に検討いたします」といった中立的な表現にとどめるべきでしょう。

SNSや社外で不用意に発信すること

警告書を受け取ったことや、その内容について、SNSやブログで公開したり、社外の関係者に話したりすることは避けるべきです。

このような情報発信には以下のようなリスクがあります。

  • 相手方との交渉を困難にする
  • 名誉毀損や営業妨害として、新たな法的問題を引き起こす
  • 発信内容が後の訴訟で不利な証拠として使われる
  • 憶測や不正確な情報が広がり、自社の評判を傷つける

特に、相手方の権利が無効だとか、不当な要求だといった内容を公に発信することは、たとえそれが事実であっても、慎重に行うべきです。


無視できない警告書は、専門家に相談して対応方針を決める

早めに相談した方がよい理由

警告書への対応は、早い段階で専門家に相談することが重要です。その理由はいくつかあります。

第一に、対応の選択肢が広がります。警告書を受け取った直後であれば、侵害回避のための設計変更、交渉による和解、権利の無効化など、様々な選択肢を検討できます。しかし、時間が経過すると選択肢は狭まり、訴訟対応しかできなくなる場合もあります。

第二に、証拠の保全ができます。時間が経つと、関連資料が散逸したり、記憶が曖昧になったりします。早期に専門家が関与することで、必要な証拠を適切に保全できます。

第三に、不用意な対応を防げます。専門家の助言なしに対応すると、前述のような「やってはいけないこと」をしてしまうリスクが高まります。

なお、初回相談では、警告書の内容確認と大まかな方針整理にとどまることが多く、直ちに高額な費用が発生するとは限りません。まずは気軽に相談することをお勧めします。

専門家に相談するタイミングは、警告書を受け取った後、できるだけ早く、遅くとも回答期限の半分が経過する前が理想的です。

相談時に伝えるとよい情報

専門家に相談する際は、以下の情報を整理して伝えると、より的確なアドバイスを受けられます。

警告書に関する情報:

  • 警告書そのもの(コピー可)
  • 送付者と受領日時
  • 記載されている回答期限
  • 主張されている権利の種類と番号

自社の状況:

  • 指摘されている製品・サービスの詳細
  • 開発の経緯や参考にした資料
  • 販売開始時期、販売数量、売上額
  • 同種の製品・サービスを展開している範囲

対応の希望:

  • 事業継続の重要性
  • 予算や時間的な制約
  • 和解の可能性についての考え

これらの情報を事前に整理しておくことで、相談時間を有効に使え、より実践的なアドバイスを得られます。


弁理士・弁護士どちらに相談すべきか?

警告書への対応を専門家に相談する際、弁理士と弁護士のどちらに相談すべきか迷う方も多いでしょう。

弁理士が適しているケース

技術的な侵害判断が主な争点となる場合、まずは弁理士への相談をお勧めします。特に以下のようなケースです。

  • 特許侵害の警告で、技術内容の理解が必要な場合
  • 意匠の類否判断が問題となる場合
  • 先行技術調査や無効理由の検討が必要な場合
  • 設計変更による回避策を検討したい場合

弁理士は技術的なバックグラウンドを持ち、特許請求の範囲の解釈や技術文献の調査に長けています。発明の内容を深く理解したうえでの判断が可能です。

弁護士が適しているケース

既に訴訟が示唆されている、または損害賠償の交渉がメインとなる場合は弁護士への相談が適しています。

  • 警告書に訴訟提起が明示されている場合
  • 多額の損害賠償請求がされている場合
  • 刑事告訴の可能性が示唆されている場合
  • 契約上の紛争も絡んでいる場合

弁護士は訴訟代理権を持ち、法廷での主張立証や交渉術に長けています。

連携している事務所を選ぶのも一つの方法

最近は、弁理士と弁護士が連携している知財専門の法律事務所や特許事務所も増えています。このような事務所であれば、技術的な判断と法的な対応の両方を一貫してサポートしてもらえます。

まずは「知財専門」を掲げる事務所を探し、初回相談で事案の内容を説明したうえで、最適な専門家を紹介してもらうのもよいでしょう。


専門家に相談した後に取り得る主な対応策

反論・回答書の送付

侵害していないと判断される場合、または権利の有効性に疑義がある場合は、反論の回答書を送付することを検討します。

回答書では、以下のような内容が考えられます。

  • 対象製品・サービスが権利の技術的範囲に含まれない理由
  • 先使用権など、侵害を否定する法的根拠
  • 権利の有効性に対する疑義(無効理由の存在など)
  • 権利者の主張する損害額の不当性

ただし、回答書の送付には慎重な判断が必要です。回答書に記載した内容は、後の訴訟において証拠として相手方に利用される可能性があります。不十分な根拠で反論した場合、かえって自社の立場を不利にすることもあります。

例えば、技術的な説明に誤りがあった場合や、法的な主張が不適切だった場合、それが訴訟で弱点として突かれることになります。また、回答書で主張した内容と後の訴訟での主張が矛盾すると、裁判所の心証を悪化させることにもつながりかねません。

回答書を送る場合でも、その内容レベルは戦略的に判断する必要があります。状況によっては、以下のような選択肢が考えられます。

  • 詳細な反論: 技術的・法的根拠を詳しく記載(反論により相手に訴訟を断念させられそうな場合)
  • 簡潔な否認: 「侵害していないと考える」という結論のみ、または「弁理士の鑑定によれば非侵害」等の簡易な理由に加えるに留める
  • 回答しない: あえて回答書を送らず、相手の出方を見る

詳細な回答書は、自社の主張を明確にできる反面、相手方に反論の材料を与えることにもなります。特に技術的な説明が複雑な場合や、無効理由の調査が不十分な段階では、簡潔な否認に留めるか、回答を保留する判断も十分あり得ます。

どのレベルの対応が適切かは、事案の性質、相手方の出方、自社の事業戦略などを総合的に考慮して決めるべきです。この判断には専門的な知識と経験が必要なため、必ず弁護士や弁理士に相談したうえで方針を決定することをお勧めします。専門家の助言なしに自己判断で詳細な回答書を送ることは、特にリスクが高いと言えます。

鑑定書の取得による客観的判断

侵害の有無や権利の有効性について客観的な判断材料が必要な場合、弁理士による鑑定書の取得を検討します。

鑑定書とは: 弁理士が専門的知見に基づいて、特許侵害の成否、権利の有効性、技術的範囲などについて書面で意見を述べるものです。訴訟における鑑定とは異なり、当事者が自ら依頼して取得する私的な意見書ですが、専門家の客観的判断として一定の説得力を持ちます。

鑑定書が活用される場面:

  • 回答書の根拠: 「弁理士の鑑定によれば非侵害」として説得力を高める
  • 社内意思決定: 経営層への報告資料として客観的判断を示す
  • 和解交渉: 相手方に侵害の可能性が低いことを示し、交渉を有利に進める
  • 訴訟準備: 訴訟になった場合の主張の土台を作る

鑑定の対象となる事項:

  • 対象製品が特許の技術的範囲に属するか(侵害の成否)
  • 先行技術との関係で特許に無効理由があるか
  • 商標の類似性や混同のおそれの有無
  • 意匠の類似性の判断

注意点: 鑑定書は鑑定を依頼した弁理士の意見であり、裁判所を拘束するものではありません。また、鑑定内容が相手方に有利な結論となる可能性もあるため、鑑定を依頼する前に、ある程度の見通しを持っておくことが重要です。

費用は事案の複雑さによりますが、数十万円程度が一般的です。費用対効果を考慮し、必要性を十分に検討したうえで依頼すべきでしょう。

設計変更・デザイン変更などの回避策

侵害の可能性が高い場合でも、製品の設計やデザインを変更することで、権利の範囲から外れることができる場合があります。

特許の場合、特許請求の範囲に記載された構成要素のうち、一つでも欠けていれば侵害は成立しません。そこで、その構成要素を削除したり、別の構成に置き換えたりする設計変更(いわゆる「デザイン・アラウンド」)を検討します。

商標の場合、使用している商標を変更したり、使用態様を変えたりすることで、侵害を回避できる場合があります。

意匠の場合も、デザインの一部を変更することで、類似の範囲から外れることができる可能性があります。

回避策の検討には、技術的な知識と法的な判断の両方が必要です。専門家と協力しながら、事業への影響を最小限に抑える方法を探ります。

無効審判・取消審判の検討

相手方の権利自体に無効理由がある場合、特許庁に無効審判や取消審判を請求することができます。

無効理由としては、以下のようなものがあります。

  • 新規性や進歩性の欠如(特許)
  • 先行する公知の意匠との類似(意匠)
  • 識別力の欠如や先行商標との類似(商標)
  • 手続き上の瑕疵

審判で権利が無効になれば、侵害の問題は根本から解決します。ただし、審判には時間(通常1年以上)と費用がかかり、また必ずしも無効が認められるとは限りません。

無効審判の請求は、訴訟と並行して行われることもあります。訴訟では権利が有効であることを前提に審理が進むため、並行して無効審判を請求し、権利の無効を争うという戦略です。

ライセンス交渉・和解交渉という選択肢

侵害が避けられない場合や、長期的な紛争を避けたい場合は、権利者とのライセンス交渉や和解交渉を検討します。

ライセンス契約を結べば、合法的に技術や商標を使用し続けることができます。ライセンス料の額や支払い方法、契約期間などを交渉することになります。

和解交渉では、侵害の有無を争わず、一定の和解金を支払うことで紛争を終結させることもあります。過去の侵害についての補償と、今後の使用についての取り決めを含めた包括的な解決を図ります。

交渉を行う場合、自社の事業継続の必要性、代替手段の有無、訴訟になった場合のリスクとコストなどを総合的に考慮して、妥当な条件を見極めることが重要です。


まとめ:警告書対応は「初動」と「判断の切り分け」が重要

警告書への対応で最も重要なのは、初動の正確さと、自己判断できることと専門家に委ねるべきことの切り分けです。

初動で行うべきこと:

  • 冷静に警告書の内容を確認する
  • 回答期限、権利の有効性など、基本的な事実を確認する
  • 社内で関連資料を整理し、情報管理を適切に行う
  • 不用意な対応(感情的な返答、謝罪、SNS発信など)を避ける

専門家に委ねるべきこと:

  • 侵害の成否についての法的判断
  • 回答書や反論書の作成
  • 無効審判の可能性についての検討
  • ライセンス交渉や訴訟対応の戦略立案

警告書は、適切に対応すれば大きな問題に発展せずに解決できることも多くあります。逆に、初動を誤ると、本来避けられたはずの訴訟や損害賠償に直面することになります。

一人で抱え込まず、適切なタイミングで専門家に相談を

知的財産権の問題は専門性が高く、一般の事業者が独力で適切に判断することは困難です。警告書を受け取ったら、できるだけ早く弁護士や弁理士などの専門家に相談することをお勧めします。

早期の相談は、問題解決のための時間と選択肢を確保することにつながります。また、専門家のサポートを受けることで、精神的な負担も軽減されます。

警告書対応は、適切な知識と冷静な判断、そして専門家との協力によって、最善の結果を導くことができます。この記事が、警告書を受け取った方の初動対応の一助となれば幸いです。

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